櫛木 理宇『殺人依存症』

殺人依存症 (幻冬舎文庫)

殺人依存症 (幻冬舎文庫)

息子が6年前に殺され事件は未解決で、息子と共に家庭も失った捜査一課の刑事が日々仕事にのめり込むなかで連続殺人と思われる事件が起きる。実行犯グループは逮捕、主犯と思われる男も逮捕でき、過去の犯行についても暴くことができたが、主人公は主犯の「妻」とされている女のことが気にかかる。

少し前に所謂「黒幕」ポジションが女だという作品はあまり思い浮かばないと感想で書いた記憶がありますが、これはガッチガチの「女が黒幕」でありました。それも極悪非道の。

捜査の過程でわかってくるその女の生い立ちもその女による数々の犯行もとにかく酷いとしか言えないし、その女に「性欲」を利用され犯行に加担した男たちの人格は控えめに言って死ねクズの一言なんで途中で何度も“私はなぜこんな話を読んでいるのだろうか?”と思ったけど、女の姿が見えてきて、主人公との関わりがハッキリし、共犯者の素性含め息子の事件をもその女の犯行であったと解ったところからは怒涛の展開すぎてページをめくる手が止まらなかった。

主人公の話がまさかこんな結末を迎えるとは思わなかったし、所々で挿入される「彼女」の視点がこういうことだったとはまったくもって予想できなかった。主人公が面倒を見ていた少女が物語の中で果たす役割はこういうことかと、なぜ女が女子供を獲物としていたのかまでキッチリ描いた挙句の完全勝利ですもん。内容が内容なので面白かったとは言えないけれど、凄い話であった。