越智 月子『恐ろしくきれいな爆弾』

恐ろしくきれいな爆弾

恐ろしくきれいな爆弾


始めましての作家さんになりますが、(帯にコメントを寄せている人が女優としてはともかく人間として好きではないのでちょっと迷ったものの)タイトルと装丁が好みだったのでこれも出会いだと手にとりました。
壮絶な過去を持つ当選3回で初入閣を果たした46歳の女性議員が男社会のこの国を変えるべく頂点を目指し、邪魔な男たちを手段を選ばず潰していく物語です。

田中角栄がモデルの政治家の愛人の子として生まれ、父親が要職に就くとなったときに身辺整理として母親諸共捨てられ、住んでいた家が火事になり母親は死に生き残った「乙子」という女が主人公で、その後父親の政敵であった男の養女となり、その地盤を継いで政治家となり、大臣となり、そして女性初の総理大臣になるまでが描かれているのですが、作中で「男が作ったルールには従わない」「男社会を壊す」と語っているわりには自分にとって邪魔な男たちを写真や音声といった物証と裏社会の大物である義兄の力を使って脅迫し従わせているだけなんですよね。
総理大臣になること=男社会を壊すってことなんだろうし、総理大臣になっても破滅の未来しか見えないという終わり方なので壊したところでじゃあ何をどうする?という話ではないことは理解してるつもりですが、読中も読後も、何がしたいんだろうなこの女・・・という思いしかありませんでした。主人公に魅力を感じないピカレスク小説って結構虚無よね。