黒川 博行『桃源』

桃源

桃源

大阪府警泉尾署 刑事課捜査二係の「遼さん」と「勤ちゃん」による新コンビ爆誕!!!

というわけで、帯に「正統派警察小説」とありまして、これを「正統」と判断するかどうかは微妙というか、なにをもって「正統」というのだろうかとか思うところはありますが、違法行為を行わないというだけで黒川作品世界的には紛うことなき「正統派」です。

沖縄の互助組織「模合」で集められた金を持ち逃げされたという被害届が泉尾署に提出され、その捜査を上司から命じられた新垣と上坂は犯人を追って沖縄へ飛ぶが、調べを進めるとそれは沈没船詐欺であることが解ってきて・・・と、始まりは地味な事件であったものが実は大がかりな詐欺事件に繋がるというこの流れにワクワクしたわー。でも疫病神シリーズのようなハラハラ感はない。なぜなら自らことを荒立て話(シノギ)をデカイものにする桑原二宮コンビとは違い、こちらはコツコツと足で稼いで(痛風を抱えて・・・)情報を集め筋道を立てて推理をし、それを立証していくという・・・やっぱりこの表現になるけど「正統」な話なので。
食べ物の話ばっかりしてるし(そういう印象)、時々は勤務中に飲むし下ネタもあるけど、でもちゃんと捜査するし、なにがなんでも手柄を我が物にするぜ!とギラギラしてるわけでもないし(それについては勤ちゃんの背景としてちゃんと理由付けがなされてます)、疫病神シリーズや堀内・伊達シリーズと比べて毒っ気はかなり控えめではありますが安心して読めます。

知能犯罪を扱う「捜査二係」の刑事が主人公なので派手なドンパチはなさそうですが、心身ともに完全にヤバい勤ちゃんはもちろん、一見マトモそうにみえるけど実はこっちのほうが危ないんだろうな・・・な遼さんコンビがこの先どんな事件に挑むのか楽しみ!。