黒川 博行『悪逆』


詐欺や新興宗教で私腹を肥やす悪人たちから財産を奪い殺す連続強盗殺人事件を追う刑事たちを描く警察小説で、そこまではいつもの黒川作品なんだけど、今作の特徴はメインの刑事コンビが即席コンビ(捜査一課の刑事と所轄の刑事)であることと、犯人の視点があるところ。

まず事件が発生し、捜査を進めるなかで芋づる式にあれやこれやの要素が出てきて「どでかいヤマ」になるのが黒川作品のフォーマットだと思ってるんだけど、今作は犯行を行う犯人の視点があるので「連続強盗殺人」であることを読者は知っている。つまり刑事たちよりも何歩も先を行ってることになるわけで、この感覚は結構新鮮でした。
そして(珍しく)犯人の視点があって、強盗殺人のターゲットとなるのは悪人とくればそこに「動機」を求めますよね。犯人にどんなドラマがあるのだろうと。
四分の三ぐらい進んだところで“犯人の素性”が判明するんだけど、それは盲点というか、わかってみればなぜ犯人がこれほど巧妙かつ冷静に立ち回ることができているのか腑に落ちるんだけどなぜだかそのセンは全く頭になかったんで驚いたと同時にそういうことならばなおさら「動機」に興味がわく。

なのになんもないでやんのw。ただの金目当て。これが一番驚いたわ。なんもないんかい!!って。