五十嵐 貴久『スイム!スイム!スイム!』

スイム!スイム!スイム!

スイム!スイム!スイム!

水泳の自由形100mと200mでオリンピック2大会連続金メダルを取った国民的英雄が自業自得で地に堕ち、そこから再びオリンピックの舞台を目指して日本水泳協会に喧嘩を売るという物語で、肝はこれまで個人での戦いをしていた主人公がリオオリンピックで新採用予定の“男女混合メドレーリレー”での出場を目指す、つまり仲間とともにチームプレーで勝利を目指すというところにあるわけですが、完全に北島○介さんをモデルにしたであろう主人公を筆頭にチームメイトたちがあまりにも劇画的すぎて、スポ根ではなくスポーツコメディといった感じです。
で、そのコメディ要素が私には合わなかった。一例をあげると主人公の元カノが主人公にシーザーサラダを頭からぶちまけるのとか。他にもオレンジジュースとかぶっかけてるんで“そういうキャラ”であることはわかるんだけど、自分ちならともかく飲食店でやることじゃないだろうと。言動が全体的にやり過ぎてて(私にはそう感じられて)、そこが無理でした。
世界ランク上位でオリンピックでメダルを目指しているような選手たちを相手にそもそもの素質が劣る人間たちがチームプレイで勝とうとするだなんて土台無理なわけで、でもその無理をやってやろうじゃないかってな話なわけだからその『チームプレイ』をどうやって作り上げていくのかってところを描いて欲しかったんだけど、これだけ振り切ったキャラクター設定にしたわりには主人公以外のメンバーは設定としての個人の事情を説明されただけでそれ以上の掘り下げがなされるわけではなかったんで、クライマックスのレースシーンでも心はピクリとも動かず。読み終わってみればチームの話ではなくあくまでも栄光と挫折を経験した主人公のリベンジ話だってわかるんだけど、せっかくのキャラクターたちが活かされなくて残念。