知野 みさき『妖国の剣士』

妖国の剣士

妖国の剣士

第4回 角川春樹小説賞受賞作で、書店で見てなんとなくピンと来たので手に取ってみた初めての作家さんです。
賞自体には全く馴染みがないんですが(どういう感じの作品が選ばれているのか知らない)面白かったです。帯文の感じと『角川』という出版社のイメージからしてもっとラノベっぽいというか、漫画チックな作品を予想していたのですが、いい意味で淡々としてるというか、視点(語り口)が冷静なのでとても読みやすかったし。
妖魔という存在から自分たちを守るために、人間は術を手に入れ結界を張ることでさほど怯えずに暮らせている世界が舞台で、自分のせいで行方不明になった(と思ってる)弟を探す旅の途中で封印されていた妖魔の目を自らの目に宿してしまった少女剣士と、妖魔を愛し妖魔の子供と暮らす凄腕剣士を中心とする物語なのですが、余計なものがくっついてないんですよね。いくらでもそれっぽいというか受けそうな要素や描写を入れられそうなもんなのに、展開上必要と思われること以外余計な描写はないと言っていいぐらいその手の要素は存在しなくて、まぁ私はどちらかと言うと(どちらかと言わずとも)そういうものが好きなのでもうちょいあってもいいのよ?と思わなくはないんですが(笑)、でも妄想の余地はちゃんとあるんで非常にバランスの取れた作品だという印象です。続編が楽しみ!。