奥田 英朗『リバー』

10年前、群馬県と栃木県それぞれの渡良瀬川河川敷で相次いで若い女性の死体が発見されたが、未解決のまま10年が経ち、再びそれと酷似する状況で事件が発生する。
という物語の始まりで、今度こそ事件を解決しなければならない両県警を中心に、10年前の容疑者を取り調べた元刑事や10年前に娘を殺された父親、県警担当の新人記者が事件を追い、10年前に容疑者となるも不起訴となった男や新たに捜査線上に浮かんだ男の恋人、変人犯罪心理学者などによるまさに圧巻の群像犯罪小説です。

年明けはコレにする!と決めて温存してたんですが、いやあ面白かった!。結構な質量(4センチありました)に相応しい読み応え!。

10年という長いスパンで5人の若い女性が殺される連続殺人という重大事件ではありますが、5人の素性を含め事件自体はこう言ってはなんですがシンプルで、群馬・栃木両県警に警察庁という捜査陣の間で権力争いすることもなく(そこには10年前の反省がある)、“元刑事”と“娘を殺された父親”のまさしく『狂気』をスパイスとしながらその捜査過程が描かれるだけの小説なのでもう一度この言葉を使うけど物語としてはほんと「シンプル」なんですよ。

と、途中まではそう思ってたんだけど、ラスト4分の1、章タイトル「決壊」から一気に事件は複雑化。
容疑者として3人の男が存在してるんだけど、これがまあそうくるか!と。
そこまでこれだけの分量を一気に読ませておいて、事件の「真相」をはっきりとは描かずこのラストシーンを持ってくるところがニクいぜコンチクショー!!。