パルコ・プロデュース2022『VAMP SHOW』@PARCO劇場

三谷幸喜作で、1992年の初演は古田新太池田成志、西村雅彦、2001年の再演には堺雅人佐々木蔵之介橋本じゅん河原雅彦手塚とおると『曲者役者』の名前がずらりと並ぶこの作品を観るのは今回が初めてです。作品名と堺さんと蔵之介さんが共演したという情報は頭にありましたが、映像ですら観たことがないので完全なるはじめましてです。

初演と再演との間が9年、再演から今回の再再演との間が21年!!と、上演間隔というにはあまりにも開きすぎている年月にはなにか特別な理由があるのだろうか?と思いつつ、上演が発表された瞬間に即「絶対観たい!!!」と喰いついた理由は「曲者揃い」の初演・再演に対し「フレッシュ」とか「若さ」を感じさせる面子がキャスティングされていたからです。
平埜生成くんは何度か舞台で観てますが(今でも蜷川さんのオールメールロミジュリの生成ティボルトを思い出すことがあります)、初舞台(だよな?)の岡山天音くんを筆頭に戸塚純貴くん塩野瑛久くん尾上寛之さん、久保田沙友さんを舞台で見るのは初めてで、菅原永二さんも確かサイケデリックペイン以来だから10年ぶりとかそれぐらいで、つまりわたし的にはめちゃめちゃ新鮮な役者さんが堺さんや蔵之介さんが演じた作品に挑む!というワクワク感でいっぱいでした。


で、結論から言うとこの「かつて古田新太池田成志堺雅人佐々木蔵之介が演じた作品である」という情報というか先入観がよろしくなかった・・・・・・です。


わたしのなかでものすごーーーーーーーーーーーーーく「演技巧者のぶつかり合い」みたいなイメージが出来ちゃってたんですよね。
考えてみれば初演当時の古ちんと成志先輩は25歳前後、再演当時の堺さんと蔵之介さんは30前後なのでおそらく技術よりも勢いのほうが先にきてただろうと思うし、確かに勢いは2022年版にもあったんですよ。というか「勢い」しかなかった。
この作品最大の魅力はその勢い、エネルギーなんだとは思うんだけど、言葉選ばずに言うけど菅原さんを除く6人の勢いが一本調子なので、そのテンションに飽きてしまったんだよな。

うっそうとした森に囲まれたさびれた駅舎というワンシチュエーション(セットの作り込みがすごかったー!ワンシチュエーションならではのクオリティ!)で繰り広げられる物語は、岡山天音くん演じる「島くん」の秘密とか、久保田さん演じる「小田巻さん」の事情とか、なかなかに波乱万丈なんだけど、全員が常に叫んでる感じなんで印象としては一本調子になってしまう。
もともとが狂った話だし、若い役者が汗だくで最初から最後までノンストップで駆け抜ける舞台だと思えば一本調子は疾走感に変わるんだけど、なまじ堺さんや蔵之介が演じた役だという情報があるがためにそこに勢いプラスアルファを求めたくなってしまうわけで、ハナからそんなものはなく勢い勝負!!の作品なんだと理解はすれども・・・的なね、そんな感じでした。


映像を主戦場にしてる人を舞台で観る時、明らかに映像のほうが向いてるなと思う人がいるんだけど、岡山天音くんは舞台上でも映像と変わらない存在感でそこに居て、これはちょっと驚きでした。映像と舞台で印象が変わらない。

天音くん演じる島くんという男は他の4人よりも年下の後輩なので基本は言いなりで主張とかはしないタイプなんだけど、咄嗟のときに流れるように嘘をつくんですよね。それは島くんが抱えている「大きすぎる嘘」の布石というか、そこに繋がるものだったんだろうけど、何度もナチュラルに嘘を重ねるもんでこの人なんなの・・・?という不気味さを覚えるんですよ。そしてそれはあてがきと言われたら納得してしまうほど天音くんの持ち味と重なるわけで、ここはキャスティングの勝利だろう。

生成ちゃんは初演では西村さん、再演では蔵之介さんが演じた役で、所謂「諸悪の根源」なんですが、メンタル的にはこの坂東が一番イカれてる。他の4人と比べると二面性があってつまり一番難しい役だと思うんだけど、声が潰れかけてて辛かった・・・。聞きづらい瞬間があることもだし、心配でもあるし。

汗だく度では生成ちゃんがぶっちぎりで、対して5人のなかでは生成ちゃんとの関係性が最も深い佐竹を演じる塩野くんが顔面にはほとんど汗をかかないまるで女優だもんでその対比はすこぶるよかったです。生成ちゃん坂東が塩野くん佐竹ごと「俺たちを貫け!」と天音島くんに叫ぶところは不覚にも滾りましたわw。