湊 かなえ『未来』

未来

未来

家庭と心に問題を抱える女子中学生の元に30歳になった自分から手紙が届く。そこには「ドリームランド」の開園30周年記念のグッズが同封されており・・・というSFかファンタジーかってな始まりですが、そこは湊かなえですから、あっという間に胸糞展開が怒涛の如く押し寄せます。
読み始めは「未来の自分」との往復書簡のような形で進むのかと思いましたが、未来の自分から届くのは1通だけで、その後は未来の自分に向けて書いた手紙の中で章子という少女の生きる世界が描かれる。章を進めると今度は章子の友人である亜里沙の物語になり、亜里沙の手にもドリームランドの開園30周年記念グッズがあるのです。というわけで、夢の国「ドリームランド」が物語の鍵となるのですが、二人に届いた手紙の送り主、その真相であり背景が明らかになるあたりからはもう湊かなえ全開です。これでもか!と言わんばかりの胸糞祭り。
でも今作はそこで終わらない。二人の少女は逃亡先の「ドリームランド」で望みを、未来を掴もうと立ち上がる。これが今の湊かなえ作品、ということなのだろう。夢の国を訪れた“普通の家族(人々)”にしてみりゃ気分台無しじゃねーか・・・ということも含めて、それを踏まえてのこの終わらせ方こそが今の湊かなえなのだろう。