薬丸 岳『ラストナイト』

ラストナイト

ラストナイト

顔面いっぱいに入れ墨を入れ罪を犯し刑務所に入って出てを繰り返す初老の男。その男と様々な形で関わりを持つ人々の視点で男がなぜそんな生き方をしているのか、男の人生を描く・・・という今ではもはや定番の1つといってもいい構成ですが、読み応えありました。ものすごいドラマティックな人生だった。
まるで豹柄に見えるような、向かい合うと動物園の檻の中にいる動物を見ているような気にすらなるほどの顔面入れ墨を入れてる前科5犯の男でありながら、悪い奴ではないのだろうってことは予想できるわけですよ。見たまんまの通りの悪人ってことだったら(そういう小説もあるけど)物語にはならないだろう。だから男がなぜそうなってしまったのかってところから始まるんだけど、その始まりからクライマックスまで、とにかく展開が見事。視点となる人物の出し方(順番)が巧いんですよね。特に物語の最初から出てた人物が視点となる章の盛り上がりはすごい。入れ墨男の人生もすごいけどこの男の人生もまた壮絶で、この人はこういう想いを抱いてこの物語に関わっていたのか!と、まさにドラマティックなんですよ。
物語の落としどころも綺麗に決まってるし、これは面白かった。薬丸さんノッてるなー!。