『重版出来!』第5話

本好きの端くれとして、やっぱりあの断裁シーンは胸が痛むし、後追いで好きになった作家さんの本を書店で買おうとしても絶版で通常の手段ではもう手に入れることは難しい・・・ってな経験を少なからずしてる者としては(黄昏ボンベイとか絶対このパターンだよー!)(ただ断裁の様子を見せるだけでなく、ここに黄昏ボンベイがあるってのが上手いよねぇ。黄昏ボンベイが産みだされここに至るまでにどんな決断がなされたのか、どんな想いがあるのか、そこを描いてきたからこそ心が言う「この光景を忘れない」って言葉に視聴者が共感できるんだよね)虚しさを覚えるよねぇ。そこでだからこその電子出版なんですよ!ってな話になるんだろうけど、でもわたしは「紙の本を読みなよ」派なんだ。最後まで読み終えて本をパタンと閉じて、本の厚みを感じつつ面白かったなーと思いたいし、装丁も含め素敵な本だな大事にしたいなって思いたいのだ。
あと社長と五百旗頭さんが実行しているという「運を貯める」話。わたしも一日一善をモットーにしてるんだけど、わたしの場合は「一日」に「一善」しかしないんですよね。いいことをする機会があったとしても、その時点で既にいいことをやってたら大抵見逃す。一日にふたつもみっつもいいことしたら自分が壊れるんでw。社長や五百旗頭さんの言う「運を貯める」ってのは単純にいいことをするってこととは違うのでしょうが、時々倍率高いイベントに当たったー!とか良席キター!とか運に恵まれるのは一日一善の積み重ねによって「運」を貯めた結果かもしれないし、わたしの人生の運スケールは所詮この程度なのだろうな・・・とか思ったり。
と自分語りはこのくらいにするとして、社長にスポットが当てられた今回はこれまでとはちょっと毛色が違いましたが、なんかものすごい気合い入った映像だったわぁ。まさかこのドラマで昭和の炭鉱シーンなんてものをみせられるとは思ってもみなかった。
正直なところ、社長の過去にここまでの尺を使う必要があったか?とは思う。多分だけど、夜釣りしてるオッサンから言われた「運を貯めろ」という言葉は社長にとっての座右の銘みたいなもので、具体的に何かを得るために運を貯めてるわけじゃあないと思うんだ。中学しか出てないのに一流出版社の社長になれてる時点で努力だけでなく「運」も使っただろうし、今はもうゲン担ぎみたいなものなんだろうなと(当たりくじを折り紙にしちゃったぐらいだからゲン担ぎの域越えてるけどw)。だからそれが五百旗頭さんに伝わり、そして心にも伝わったこと、その心持ちというかスタンスというか、そういうものが引き継がれている、引き継がれていくってことが伝わればいいのかなーと。であればここまでしっかりとした“社長の過去”を見せなくてもよかっただろうと。
でもこれだけのものを撮った。その理由は『本が私を人間にしてくれた』というこの一言のためだったんじゃないかな。この一言を描くために、この一言をただの台詞にしないために、これだけ力の入った社長の過去編が必要だったのだと。であればわたしは納得。
で、社長の青年時代を演じた生成くんが非常に良かった!!。生成くんとはアミューズに所属する平埜生成という俳優さんです→http://artist.amuse.co.jp/artist/hirano_kinari/
野村周平くんを推すのは結構だけど、野村くんがイケる(と思ってる)なら生成くんもイケると思うのアミューズ!!)
荒んだ目をしつつも知性を感じさせ、炭鉱で働いているという説得力のある肉体。なおかつ昭和顔。そしてやがて高田純次の顔になる。
この条件に見事合致してくれた生成くんがわたしにとっては間違いなく今回のMVPです!!!。お婆ちゃんを背負う五百旗頭さん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・より・・・・・・・・も。も!!。
つーか社長を人間にしたのは宮沢賢治ってところまではいいんだけど、高田純次に人生を変えるキッカケを与えたのが火野正平で、さらに後押しするのが安齋肇ってこれが現代の連続ドラマのキャスティング、しかもシリアス調だと思うとこれまでとは違う意味で凄いわこのドラマと思わざるを得ないw。
東江さんや中田くんがデビューに向けてもがいている一方で、あっという間にデビューし単行本の発売までいった大塚シュートくんですが、書店に並んだ自分の本を見た大塚くんと裁断される大量の本を見た心が「この光景を忘れない」と同じ言葉を発したのはちょっとこみ上げるものがあったんだけど、直接ではないもののその両者を社長の存在が繋ぐってのは見事でした。
新しい本が世にでる一方で、この世から処分される大量の本がある。
わたしはただただ出版された本を選り好みしつつ貪り読むだけですが、わたしもこの事実を心の片隅で忘れないようにしよう。忘れないでいたい。