『重版出来!』第8話

上手い。実に巧い。なんかもう、巧いなーという感想しかでないわ。
これだけいろんな話が並行して描かれているのに、散漫な印象にならず、それどころか時間が進むにつれそれぞれの流れがエンディングに向かってだんだん一つになっていき、最終的には穏やかで大きな河となる。
毎回その流れに気持ち良く乗らせてもらってるけど、今回は特にその巧みさを感じました。
編集長と牛露田先生の話が軸になるのはわかってるけど、小泉くんVSエンペラーの営業の話、河さんの存在がそれとどう結びつくのかと思ったら、まさかまさかの善ちゃんの書店に“たまたま”牛露田先生と奥さんが訪れるというミラクルを楔にあれよあれよという間に全てがひとつになるこのカタルシスといったら。
牛露田先生にアユちゃんが「お父さんの漫画よんだよ。すっごく面白かった」と笑った瞬間、河さんが自分に声を掛けた人物が山縣留羽だと気付いた瞬間、画面がパアアアっと鮮やかに色づいたもん。
でさ、今回の何がグッときたかって、善ちゃんと河さんを大好きな作家さんと会えた感激、「書店員やっててよかった!」ってな思いで結び付け、そしてかつて14歳の河さんを救った留羽先生の漫画が今14歳のアユちゃんを救うというこの流れですよ。本を愛し本の面白さを届けるために日々頑張って働いている善ちゃんと河さんは憧れの作家さんに会って言葉を交わすというご褒美を貰えて、牛露田先生とるう先生は読者(娘と河さん)からの想いのこもった言葉を貰えたというこの繋がり。
構成・脚色の見事さはもちろんだけど、本好きとして、もう・・・我が事のように嬉しくなっちゃったですよー!!。
(その一方で地方とか小さな書店の現状もほんのちょっととは言え描かれてて、遣る瀬無い思いもありました。確かにネット書店は便利だけど、それは“欲しい本”を探したり買ったりするための“便利さ”なんだよね。わたしが全く知らない作家さんに出会うキッカケってのは書店で“たまたま目についた”ってのがほとんどで、その理由はタイトルだったり帯だったり装丁だったり、もっとすごいのになると触れた瞬間ビビビっときちゃうんですよ(わたしはそれを運命だと思ってます)。つまり新しい作家さんであり作品を知り、読者となる=本を買うためには、本という現物を眺めて手に取ってする必要があるんです。それはネット書店ではできないこと。だから書店には頑張って欲しいって心から思うんだけど、でも町の書店はベストセラー作家の作品しか置いてなかったりするんですよ。あ、わたしが今語ってる「本」ってのは小説のことですが。だからどうしても大手書店に行ってしまう、というか行かざるを得ないんです。その結果町の本屋さんはどんどんと潰れていく・・・・・・んですよね。本が好きで、町の本屋さんを支えたいって気持ちはあるんだけど、でも実際にわたしがやっていることは小さな書店を追い詰めてるんだよなぁ・・・とか思うと心苦しい)
牛露田先生がビシっと!・・・とまではいかなかったけど、ちゃんと背広を着て契約の場にやってきた姿はよかったなぁ。最終的にはシャツでちゃってて娘に注意されてたけどw。扉を開けてよたよたしながら牛露田先生がやってきて、それを支える和田さんのカットが一番涙腺にキタわ。漫画屋(ってこの言い方もいいよね)でありトーチャンである二人の現在(と書いていまと読む)にいろんな背景含めて胸が熱くなった。
現実問題として、自分の名前すらマトモに書けない牛露田先生はもう新作を描くことは出来ないんじゃないかと思うよね。そんな状態で電子書籍化してある程度の収入が得られたら、それが幸か不幸、どちらに転ぶかわからないと思うの。でも娘の父を見る目が変わったこと。これだけは確実な変化であり結果だよね。この先、牛露田親子にどんな未来が待っているのかわかりませんが、娘が漫画家としての父親を理解したことは、母親の想いを知ったことは、二人にとって確実に前向きな材料だよね。
牛露田先生は未来の中田くんなのではないか?という気もしてたんで、牛露田先生の話がどうなるのかとドキドキしてたんだけど、先はどうあれあったかい話でよかった。ホッとしたー!。
ってなわけで中田くん。
沼さんの「俺の分まで頑張れ」を「俺は俺なんで」とぶった斬った中田くんを天才ならではというか、そういう男だからこそ中田伯は天才なんだと、わたしはそう受け止めたんだけど、そっか、あれは中田くんなりの自分を守るための『殻』なのか。守るためというか、自分が自分であるための、かな。
思いがけず会ってしまった大塚シュートが自分とは真逆の人間であると改めて知ってしまい「すごい顔」(五百旗頭さん談)をした中田くん。この時点で中田くんはシュートを「意識」しちゃってるよね。それはつまり他人への興味だろう。
で、今中田くんはその殻を破ろうとしていると、殻を破れるか、自由になれるかどうかは中田くん次第だと、だから見守ってやれと三蔵山先生は仰ったけど、そのキッカケを与えたのは沼さんなんですよね。沼さんのネーム、沼さんがくれた落語iPod、沼さんとの出会いが中田くんが羽ばたくキッカケなんですよ。
それはまさしく沼さんの想い。沼さんが中田くんに託した「俺の分まで頑張れ」という想いだよね。まだ中田くん自身はそのことに気付いてないし、沼さんだってそんなつもりで託したわけじゃないだろうけど、沼さんは中田伯という天才に影響を与えた(与えてる)んだよ!!って沼さんに教えに行きたい。そんで沼さんの店で酒買って「一緒にどうですか?」って誘いたい。
他人に興味がない、他人の感情が理解できない中田くんが、自分の中に芽生えたシュートに対する感情に、なのかなぁ?驚き怯え、とにかくシュートから逃げるためにエレベーターの「閉」を連打し頭抱えてしゃがみこむ姿は切なかったけど(中田くんが連打してた「閉」ボタンは中田くんの心の扉のボタンでもあるんだろう)、でもどちらかと言えばシュートの方がショックよなぁ(笑)。あの状況であれだけ完全に「拒絶」されたら普通の人間は悩むぜ?(笑)。
(あ、普通で思い出したけど妖怪パタパタに対抗しようとしてた小泉が「普通に頑張ろう」って言ったのもよかったなー。パタパタはパタパタ自分は自分ってことなんだろうけど、小泉くんにとってそれは「普通に頑張る」ことなんだなーって。こいつ成長したよな!)
そしてメロンヌ先生の新作がまたもや「全くわからん!!」ってな感じなようで、それでこそ俺達のメロンヌ先生!!と思いながらも新連載当初は面白いって言われてたはずなのにまたもや「わからん!!」になってしまったのか・・・・・・と心配でもある。
って、予告で五百旗頭さんがダッシュしてるううううううううううう!??ていうか眼鏡!!五百旗頭さんがノー眼鏡でなんか絶叫してるんですけど!!!!!!!!!!!!!!。
これはもうどう見てもお漏らし対策必須案件です!!!!!!。