『黒執事-地に燃えるリコリス2015-』@赤坂ACTシアター

はぁー、古川セバス、ほんと最高だった。
初演からずっと演じ続けてきた松下くんによる確立された「セバス像」があって、しかも主要キャストがほぼそのまま変わらない中での新作ではなく再演と、条件としては決して楽なものではなかったと思うのだけど、見事に古川くんのセバスを作りあげた。二人を比べるにあたって“松下セバスはアニメっぽくて古川セバスは原作っぽい”ってな意見をよく見聞きするけど、同じ話ではあるものの馬(チェスの駒)をパカーーンと割って登場したりとコメディ演出があった前回に対し今回はよりダークさを追求する演出になっていたので、そういうところも影響してるかなーと思いつつ、概ね同意かな。

松下セバスはそれまでオリジナルを2作やってきて、その2作ではムード歌謡を歌ったこと(未だに許せない)を筆頭にわりとセバスのお茶目な面を見せる場面が結構あって、そういう“セバス像”があるうえでのリコリス初演だったわけだけど、本来リコリスのあたりのセバスってそんなにお茶目度高くないと思うんだよね。まだシエルのことを言ってしまえば「獲物」としか思ってない時期だと思うの。

『悪魔で執事ですから』ってのが、松下セバスは 悪魔<執事 なのに対し、古川セバスは 悪魔>執事 だとわたしは感じたんだけど、「地に燃えるリコリス」という作品単体でとらえるのではなく原作通り“あの時点”でのセバスだとすれば、わたしは古川セバスのほうが合ってるなと感じました。
だってもうシエルのことを「食べたい感」を隠さないんだもん。

松下セバスは悪魔で執事であることを楽しんでいるように見えたんだよね。もちろん目的は坊ちゃんなんだけど、使用人ズの使えなさっぷりに「ヴァ・・・改め」と言いつつ、毎日こんな感じのこの一年をなんだかんだで楽しんでるように見えたんだけど、坊ちゃんの部屋で使用人ズのポカの報告を聞いてる時の古川セバスは心底厭そうだった(セバスに“こんな顔”させることが出来る使用人ズって、つくづくいい仕事するわよねーw)。

松下セバスは人間に馴染みながらも時折悪魔がチラ見えする・チラ見せするセバスなのに対し、古川セバスは悪魔であることをそんなに隠そうとはしていないセバスというか。ドルイット邸での裏オークションでそこにいた者達を狩ったあとの曲でシエルの背後から背中を丸めてにじり寄るように迫り、次の瞬間スッと執事に戻るんだけど、その二面性が古川セバスははっきりしてるように感じた。坊ちゃんの扱いも結構ぞんざいというか、涼しげな笑みや穏やかな笑みの裏でずっと酷薄そうな笑いを浮かべてそうな感じというか。ちなみに松下セバスはずっとニヤニヤしてる感じw。

ってな感じで優也のセバスとは全くアプローチの違うセバスで、これはかなりの冒険だったと思うんですよね。繰り返すけど今回は「再演」なわけで、どうしたって前任者の印象はチラつくし比べられてしまうわけで、でもだからといって前任者をなぞればいいのか?ってことでもないわけで。それに元々役者のタイプが違うわけでさ、当然古川くんなりのセバスになるだろうとは思ってましたが、ここまで根本的なところから変えてくるとは思ってなかったんで驚いたし、どっちが先かはわからないけどセットも演出も『新・セバス』を見せる・魅せるための仕様(力)となっていて、松下セバスとはまた違う、これはこれですごく素敵な悪魔セバスを作ってくれたなと。

とかなんとか冷静に書いてはみたけれど、言ってしまえば

古川セバスのビジュアル完璧すぎる!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

もうこれに尽きるんすよお!。古川くんを見知ってる者としてある程度予想も期待もできますよ。まぁ合うだろうなと、似合うだろうなと、そう思ってはいましたよ。でも実際生で見た古川セバスチャンの二次元スタイルの破壊力といったら!!。細いけど結構しっかりしてる肩幅から細い腰小っちゃいお尻長い脚、そして超小顔。タッくんグレルやヒデ様こしゃくとは次元の違う『リアル』がそこに顕現してた。マントを外して執事姿で紅茶をサーブする古川セバスを見た瞬間、あまりにもあまりなリアルっぷりに気絶するかと思ったわ。麗しすぎて。悪いけどビジュアルだけなら優也セバスに10馬身差で勝利よ勝利!!。カテコで全員並んだ時に一人だけ明らかに等身がおかしい。それが圧倒的悪魔感というか超説得力人外感というか、ほんとこれどうかしてる。これまで素敵な古川くんをたくさん見てきたけど、古川くんの顔とスタイルをここまで活かせる役はなかったっ!!(断言!)。

しかもビジュアルだけじゃねーんですよ!。イエスマイロードで跪くときに燕尾の裾をスッと払うのとか、坊ちゃんに靴を履かせるときに台にすべく膝を立てるのとか、動きがとにかく美しい。立ってるだけで美しい。
ソロ曲のなかでグレルが坊ちゃんの顎をクイっと持ち上げるようにして撫でるんだけど、そのあとシエルが当然の顔で傲慢に顎を上げると(シエルかっこいいよおおおおおお!)セバスがすかさずスッと拭き取るようにするんだけど(初日に後ろの席から「えっ!?お清めっ・・・!?」って呟きが聞こえて思わずワロタw)、その白手袋に包まれた指が美しい。マジックで付けた仮面を外す瞬間の手つきとパッと外れた仮面をキャッチする手つきが美しい。
グレルのデスサイズを止めるために御屋敷から支給されたジャケットをダメにしなければならないと言う前、フーッと一息吐き出しつつ天を仰ぐのも、奪ったデスサイズを片手にウィルに甚振られるグレルに時折冷めた目線を送るのも美しい。ああもうなにもかも美しい。このひとほんとうに悪魔なのではなかろうか。いやもういっそ悪魔であってほしい。

ていうか家庭教師Ver最高すぎるから。古川くんの眼鏡セバス最高すぎるから。最高すぎて死にたい(リコリス再再演がない限り眼鏡古川セバスを拝める機会はもう二度とないだろうから)。

それからなんと言っても歌声がとても良かった。語尾が消えちゃう台詞の言い方は相変わらずだけど、歌声はほんと良かったよー!。

わたしは台詞(演技)よりも歌のほうがより優也セバスを思い出してしまったんだけど、本編ラストの歌い上げるところとか優也に負けないぐらい声量あったし、会場中の空気を切り裂くような優也セバスの歌声に対し、古川セバスはじわじわゾクゾク包み込む・・・というよりも絡みとる、絡めとるような歌声で、世界観にとても合っていた。帝劇で場数を踏んできただけあって歌う姿にオーラがあったし、以前は難があった声量も(このクラスの舞台では)ほんと文句なしで、古川くんはほんとうに成長してるんだなーと、着実に力を付けているんだなーと、それを実感することが出来てすごくすごくすごくうれしかった。
だってACTシアターで座長として挨拶してんだもん。カテコ仕切ってんだもん。なんかいろいろ思い出すと、あの古川くんがよくぞここまで立派に育ってくれたわ!ってなもんですよw。千秋楽でついに坊ちゃんを姫だっこしたものの那由他坊ちゃんがぐでーんと身体逸らして仰向けでバイバイするもんだから、まるで酔っ払いを運ぶ人のようでしたがw。


一方のグレル。タッくんグレルの安定感はもはや言わずもがなですが、これまでで最もキレてたわーキレッキレだったわー。ヘタレ執事時でも動きキレてますからねw。キレすぎてて若干本来のグレルから遠ざかってる気がするけど・・・w。

今回の再演では前回よりも更に赤色コンビを前面に出してて(セバスが変わったことと関係してるのかなぁ?)、本来の貌を見せたグレルのソロナンバーがあるんですよ!!。初演からずっとグレルの扱い、グレルの描き方に不満を抱いてたわたしなのですが、前回のリコリスでついにグレルがグレルとして役割を担い物語に関わることができて、もうそれだけで大歓喜だったんですよね。タッくんのグレルをずっと見続けてきてよかったと。なので再演に際しグレルに関しては前回と同じであれば充分だと、それ以上は望みませんと、そういうつもりでいたわけです。そしたらソロ。なんとソロ。欲を言えば赤ジャケットで歌って踊って欲しかったけど(シエルとセバスに正体暴かれた直後なので服装はまだヘタレグレルのまま)、これ以上望んだら罰があたるわっ!!と思うほどガチで踊るソロナンバーだもんで真顔になりました。わたしは感情メーター振り切れると真顔になります。

いやだってさー、ガシガシ歌って踊るグレルも見たいんだけど、見るんだけど、背後で坊ちゃんとセバスがダンサーに煽られたりしてちょこちょこ動きまわってんだよね。そしたらそっちに目が行っちゃうじゃん?でもグレル見たいじゃん?。無理じゃん!!!。今日はグレルを見よう!グレルだけを見よう!って思って席に着いたはずなのに、どーーーーーしてもセバス見ちゃうんだよう。で、ギャー!ってなって最終的に真顔になってました。毎回。

グレルは今回鬼畜度がさらに増したように感じました。さいこうです。「さっさとそのガキ殺っちゃいなさいよ」も吐き捨て感がより強くなってたし、デスサイズのぶん回し方も荒くなってるように見えて、それが女達に対する嫌悪感と、それからマダムに対する・・・愛だよなぁ、マダムの想いに対する共感の強さを感じさせて、それゆえに甥っ子を殺せないマダムに、愛した男の息子を殺せないマダムに対する「ただの女になったアンタに興味ないわ」がより劇的になったと思う。

でもタッくんグレルはカテコで次に登場するマダムに対し小さな投げキスをマダムが立つ場所に置くんだよね。それがグレルの中に残るマダムへの愛の証に思えて、毎回グッときてました。まー次のマダムはおもきしグレルに投げキッスするんだけどw。

わたしが前回死ぬほどときめいた変身シーンでの残虐手袋装着ですが、今回は前回よりも暗がりでなされているので見えにくいのですが、そこがいい(笑)。

そして今回のグレル最大のピギャーポイントはマダムのシネマティックレコード内で娼婦並ばせてチョイチョイって指先で手招きするグレルでした。チョイチョイからのぶった斬り鬼畜最高。


黒赤戦は初日からの4公演目あたりまではグレルの歌詞が聞き取れるわ、セバスの回し蹴り美しカッコよすぎるわ、グレルに頭突き喰らって階段からよろめき落ちるセバスそそるわ、とにかくもう最高最高最高で胸も頭もいっぱいいっぱいだったんですが、途中でふと「タッくん顔でけーな・・・」と思ってしまった瞬間がありましてですねw、身体だけならタッくんVS古川くんはまさに異次元バトルなんだけど、顔(のサイズ)は優也のほうが合ってたかなぁ・・・・・・・・・・・・・・・・なんてね☆(←アバハン)。

簡易感想でも書きましたが、わたしは古川くんと植原くんがとてもとても大好きなので、二人だけが舞台上にいて、バレエとダンスで培った身体能力をフルに使って戦い合う古川くんと植原くんなんてものを観ることができて、ああ、もう思い残すことはないなー的な、幸せ通りこしてなんかもう成仏しちゃった感じでしたw。


初の海外公演がどうかどうか成功しますように。
コマ送りで古川セバスの一挙手一投足一蔑み目線を眺め倒したいので早く円盤欲しいー!。