乙 一『Arknoah 1 僕のつくった怪物』

Arknoah 1 僕のつくった怪物

Arknoah 1 僕のつくった怪物

父親は航空事故死、母親は二人の息子を育てるためにいかがわしい仕事をしている。それが理由(キッカケ)で酷いイジメを受けるようになった兄弟は父親の部屋で自費出版されたと思しき「Arknoah」と描かれた 1冊の本を見つけ、その本の中に入り込んでしまう。そこは“創造主”によって作られたいくつもの箱庭が重なってできている世界で、二人はそこで自分たちを苛めた奴らに、全ての人々に対する憎しみの心が生みだした“怪物”とともに“異邦人”として存在するが、二人とそれぞれが生み出した怪物は繋がっていて、怪物を倒さなければ元の世界に戻れない。
・・・こうやって書くとなんかちょっと違う気がしなくもないんだけど、つまり怪物=自分の心の中にある闇を、自分自身の手で倒す=乗り越える・・・ってな話なんだろうなーと。それを完璧な『世界観』の元作られたファンタジー世界の中で行うってところまでは今じゃもう死語になりつつあるのかもしれませんが、まさに「ジュブナイル」。
だがしかし兄弟が本を手にするくだり(本来の目的)をはじめいちいちダーク。そこかしこがダーク。いちいちヘビー。ジュブナイルであろうがなんだろうが、乙一の物語にはいつもながらに甘さが皆無。
多分それらは当然タイトルの『アーク・ノア』に繋がるんだろうけど、この物語がこれからどう展開されどういう結末を迎えるのか、楽しみなシリーズができました。