真梨 幸子『プライベートフィクション』

プライベートフィクション (講談社ノベルス)

プライベートフィクション (講談社ノベルス)

ドス黒い感情を抑え込みながら(時々漏れますが・・・)生きている私にとって、真梨幸子の作品は最終的には裏切らないと信じられる唯一の友人・・・のようなものです。所謂『厭系小説』は多々あれど、私がその底意地の悪さを、ねっとりとした悪意を、安心して楽しめるのは真梨作品だけだから。
人間だれしも絶対に黒い感情はあるし人には見せない(見せられない)貌ってのを持ってるわけで、それらを描いた作品はよくありますよね。そこにちょっとした共感というか自分だけじゃない的な安心感や、逆に私はここまでひどくないから大丈夫的な安心感、そんな想いを抱かせてくれる作品はよくあります。
でも真梨作品で描かれているのはそこではなく、二面性そのものではなく他人の裏の顔であったり不幸であったりをそうとわかった上で眺めながらニヤニヤする感じ、これなんですよ。この心地よさは真梨作品でないと味わえない。