小路 幸也『花咲小路四丁目の聖人』

花咲小路四丁目の聖人

花咲小路四丁目の聖人

地方の寂れた町(この作品は商店街)の再生物語って特に最近多いように思うのですが、小説なんてそもそもそういうものではあるのだけれどそういう作品は特に絵空事もしくは夢物語のように思えてしまいがちです。だって現実はそうそう作中のように上手くいくわけがない。だから地方はどんどん衰退してるわけだし。で、この作品はというと、なんとなんと“伝説の怪盗”が商店街を救うってんだからこれぞ夢物語以外のナニモノでもないわけですが、現実はそうそう上手くいくわけがないという感情を逆手にとってというか、イギリスで伝説の存在である「SAINT」と名乗る怪盗というありえねえええええ!(笑)存在を用意したことで逆に“商店街の復活”に現実味が加わったような気がしました。あくまでも「気がする」程度だけど。
ていうか、小路さんはドリカム編成・・・という表現は古いか、いまだといきものがかり編成?そんな表現聞いたことありませんが(笑)、とにかく女1男2の物語が上手いと思う。商店街が舞台なわけだから普通だったらもっと多くの人物を出したくなるところだと思うのですが、メインの三人に集中してくれたことで三人の魅力はギュギュギュっと伝わってきたし、その三人を通して怪盗という非現実的な存在ですら肉を伴って感じることができました。この人目線の過去編が読みたい!と思うくらい。