荻原 浩『僕たちの戦争』

僕たちの戦争

僕たちの戦争

「根拠なしポジティブ」が持ち味のフリーター(ただし現在はプー)とお国のために死ぬことが望みであるバリバリの特攻隊員が共にタイムスリップ。何故だか入れ替わってしまった!顔も体格も足のサイズもまるでいっしょ。おまけに趣味嗜好、字までもが似ているらしい。当然好きな女も一緒。驚きとまどいつつもそれぞれ順応しはじめる二人。愛と青春のタイムスリップ・ウォー です。


タイムスリップはいいとして、家族や彼女まで入れ替わりに気付かないのってどうよー。さすがにセックスすりゃ気付くだろ。大きさまで一緒なのかよ!ってな話ですよ。何のだよ。ホントにもう。現代パートのほうね。彼女がおかしいな?と思うようなシーンは多々あるのに、結局それはほっぽらかし。疑いはいつ晴れたの?と思った。特攻隊パートのほうは、入れ替わりに誰も気付かないってことは許せる範囲なんだけど、おじいちゃんが出てきたりすると、なんか萎える。戦争はもうすぐ終わることを知っていて、無事にそのときを迎えればいいと思っていたフリーターにあのラストを迎えさせるためには、友情とか国とかそういう漠然としたものよりも、好きな女のために、っていうほうがアリだっていうことなんだろうけど、できすぎの感が。ちょっと消化不良な感じが残った。
異なる環境に突然放り込まれた男二人がそれぞれアタフタする描写は、想像通りなんだけど面白い。戦時中の若者が携帯見たらビビるよなー。あとギャル。これが中年ぐらいのおっさんとか初老のおっさんだったりするとまた違うんだろうけど、若者は染まりやすいというか、それなりに順応できちゃうもんなんだよな。
ちゃらちゃらぷらぷらしてるそこらへんのガキどもに、やることないなら戦争行って揉まれてこいってのと、今の子は物を粗末にしすぎる、昔は食べるものも満足に食べられなかったのに・・・とかなんとかいうのを混ぜてみて、昔も今も不変なものってことでトッピングに愛をのせてみたって感じですかね。
読み口は爽やか。でもなんか中途半端。ここらへんがいまいちブレイクできない所以だろうか・・・。