青柳 碧人『名探偵の生まれる夜 大正謎百景』

「むかしむかしあるところに、死体がありました」を書かれた作家さんで、「むかしむかし~」や「赤ずきん~」が昔話や童話といった「ものがたり」を下敷きというか脚色しているのに対し、こちらは「大正の文化人」が登場する謎物語となっていて(それぞれ実際のエピソードを元にしているのかもしれませんが、人名や名称以外はわからずオリジナルストーリーのつもりで読みました)、あんな装丁なのにダークな世界観の「むかしむかし~」や「赤ずきん~」とは違い比較的ハートフルな内容であり後味の作品集であるのはやはり「実在の人物」をモデルにしているからだろうか。

そんななかで最もページ数の少ない(ショートショートと言っていいほどの)『芥川龍之介』が登場する「名作の生まれる夜」は仄暗い後味で良かったです。短いだけあってキレッキレ。やはり私はこういうタイプの作品のほうが好きだ。