青柳 碧人『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う』

赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。

赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。

  • 作者:青柳 碧人
  • 発売日: 2020/08/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

赤ずきん」がクッキーとワインを届けに行く道中で出くわした殺人事件を解決する物語です。
前作という扱いでいいのでしょうか?「むかしむかしあるところに、死体がありました。」が日本のむかし話をなかなかに皮肉の利いたアレンジで見事な謎解き小説として再構築されていたので今作も期待しちゃったわけですが、感想としては『さすがグリム童話』ですわ。胸糞悪いのなんのって!!。
取り上げられた作品は収録順に「シンデレラ」「ヘンゼルとグレーテル」「眠れる森の美女」「マッチ売りの少女」で、探偵役である「赤ずきん」はそれらとは違い物語の“その後”というか“その先”を描くスタイルです。
で、何が胸糞悪いのかというと(以下でネタバレします↓↓)











シンデレラでは『盗みを見られて性的に脅迫されそうになったシンデレラが姉に罪をなすりつける』し、ヘンゼルとグレーテルでは『ヘンゼルがグレーテルを性的虐待』するし、眠れる森の美女では『眠ってる姫がモノ扱い』されてるし、マッチ売りの少女は『マッチ工場を経営してる親戚を焼き殺し工場経営を引き継ぎ人々を廃人にするマッチで金儲け』ですもん。

で、赤ずきんは様子伺い(お見舞い)に通ってたおばあさんがマッチ売りの少女が運営する会社のマッチで廃人にされた挙句死んでしまった恨みを晴らすべく、マッチ売りの少女を殺すために旅をしているというもので、前作と比べてエグさの方向性が全く違う。ヘンゼルとグレーテルなんてもう、「そういうこと」だとわかってみるとそれまでのなにもかもが地獄でしかないもんで、後味最悪ですわ。マッチ売りの少女が見る夢が「金!金金金!!(まずは親戚殺そう!)」とかさすがグリム童話(二回目)。

元の作品の設定、展開を踏まえたうえでの謎解きについては前作同様アプローチの仕方を含めて切れ味抜群だし、それでいて魔女とか喋るオオカミとか喋るテントウムシといった童話要素も世界観的に違和感なく織り込まれていて、今作も非常に面白かったです!。