生馬 直樹『連鎖犯』

中学生の姉と一つ年下の弟が誘拐される。シングルマザーの母親は500万の身代金が用意できないなか、姉弟は無事発見される。その後、女性コメンテーターが母親の責任について激しく糾弾したことから母親へのバッシングが高まり、しばらくして母親の死体が発見される。母親は自殺とされ、姉弟児童養護施設に引き取られることになるが、それから十年弱が過ぎ母親をバッシングしていたコメンテーターが殺害され、誘拐事件に関わった刑事たちは姉弟の存在を思い出す。

という物語で、前半は刑事の視点で、中盤以降はそこに成長した姉弟の視点が加わる構成です。

筋としてはコメンテーターの死は母親を死に追いやられた姉弟の復讐なのか?になるんだけど、明らかになった「真相」が言葉選ばずに言うと「マジ糞」。誘拐に関わった人間たちの思惑が問答無用でクソオブクソすぎて胸糞悪いとはこのことですわ。
まあ「連鎖犯」たちは揃って最終的には因果応報で“人生終了”するし、貧困がもたらす弊害に触れつつ、それを含めて前向きな終わり方なので後味は悪くなかったけど。

ところでちょうどいま「営利誘拐」を扱うドラマを見ているもんで“作り話”ではありますが「5億」「10億」という身代金を用意できる親たちがいる一方で「500万」を払えない親もいるってところに妙なリアリティを感じてしまった。