『アンナチュラル』第9話

あとだしじゃんけんのようですが、前回の火事で三郎さんが救った唯一の生き残りを演じたのが尾上寛之さんで、これだけの役なら尾上寛之をキャスティングする必要はないだろうというメタ目線が予想の発端ではありますがレギュラー陣の中に“実はこの人が・・・!”というドンデン返しどころかちゃぶ台ひっくり返しがないとすれば(そうあってほしいと思ってた)この男が“犯人”なのではないか?とは思ってました。隣のビルに捨てられた遺体の状態に対し火事に遭いICUで治療を受けているという鉄壁のアリバイがありはするけど、そこには何がしかの理由・トリック、もしくは誰かの関与があるのだろうと、そう思ってました。さすがに「蟻酸」なんてものは知らないし、不動産屋=人生の転機を迎える若い女性を見つけやすいだなんて思いつかないし、宍戸が歌う♪ABC〜がまさかまさかそんなことだったとは思いもよらなかったものの、中堂の恋人を殺した犯人についてはだからそこまで驚きはなかったです。
中堂と恋人の出会いもベタだったよね。中堂さんが以前(糀谷有希子さんと出会う前)から「クソ」使いだったのはフフッとなったけど、似顔絵とか逆プロポーズとかもうベッタベタのあまあまだった。
だから言ってしまえば「ふーん」ってなぐらいの話(回)であるのに、あるはずなのに、中堂さんの過去にクッソ泣いた。中堂さんの過去が普通中の普通であることが、店なのに手料理食べさせて断りもなく似顔絵描いて逆プロポーズなどという手管に引っ掛かってしまうチョロイ男であることが、恋人の遺体を黙って解剖したはずの男が結局はひとりでこっそり泣き崩れる普通の男であったことが切なくて、じくじく泣いた。
UDIから高瀬不動産までどれぐらいの距離があるのか知らんけどタクシー使えよと、追いかける六郎もバイク使えよと(年齢差10以上はあるだろうにぶっちぎられてんじゃないよと)、泣きながらつっこむわたしいい視聴者すぎるだろう!。
しかしこうなってみると宍戸は何がしたい・したかったのだろうか。高瀬のABC連続殺人にいつから・どれだけ(どんな形で)関与してるのだろうか。
高瀬がABC殺人を達成するか、それとも中堂が高瀬が犯人であることを突きとめ殺すか、記者としてどっちに転んでも美味しい記事が書けるだろうってな目論見だった・・・とか?。高瀬に復讐するのは中堂でなくとも構わないものの恋人をそうとは言わずに解剖し一時は殺人の容疑で逮捕された男ってのはこの上なく美味しい素材だろうし。だとすれば中堂に脅迫状を送ったりして煽ってたのはなんだったんだ?って話だけど。
ていうかABC殺人の殺害方法が判読できる限りでもかなり特殊な知識が必要なものもあるように思えるんだよね。「F」のホルマリンだって“頭から点滴でホルマリンを注入する”なんてこと知識と技術がなくちゃできないよねぇ。宍戸が犯人のことを“極めて慎重で優秀な人間”だと言ってたのはつまりそういうことだと思うのだけど、不動産屋の高瀬がその知識と技術を兼ね備えているか?というとちょっとピンとこないかなぁ・・・。実行犯は高瀬なんだろうから警察の捜査の目を誤魔化しすり抜け26人もの人間を殺し続けるだけの天才的な殺人技術の持ち主であることは間違いないとしても、アルファベットにこじつけられる26もの殺人手段(死因)については誰かがアドバイスしてた・・・ってことはないのかなーと。そしてもしそんな人物がいるのだとしたら、その最有力候補はやはり宍戸・・・ということになるのではないかと、そんなことを考えてしまう。
だって行方不明になった常連客の女の子についてバーのマスターと宍戸の言い分が真逆なのが気になるもんな。この子がABC殺人最後の「A」で殺された被害者だとして、マスターは“宍戸のアパートに連れ込まれたもののあまりの殺風景に帰ってきちゃったと言っていた”と言い、宍戸は“マスターに言い寄られて困っている”と言っていたと言う。この時点で六郎は宍戸を犯人だと疑っていたわけで、それを宍戸も察してはいただろうから適当なことを言って誤魔化そうとしたってことはあるかもだけど、それにしたってマスターに言い寄られてただなんて誤魔化しのネタとしてはお粗末だし、これまで見続けてきて脚本的にそんな“無駄”なことを言わせるかなーと思うのよね。というか、ここまで無駄がない脚本であったわけだから、この会話にも意味があると考えていいのではないかと。
とすると、マスターに言い寄られていたことは本当で、その相談がてら宍戸の部屋に行き、そこで引っ越せば?目の前の不動産屋を紹介するよってな話になり、そのあと部屋の雰囲気的にそういう感じになりもしないのでそれだけで帰りましたと、そういうことだったんじゃないかなーと。つまり被害者に高瀬の不動産屋を紹介したのは宍戸だったってなことではなかろうか。マスター曰く宍戸が羽振り良さそうなのにボロアパートに住み安い酒しか飲まないってのも高瀬の活動資金に回してた・・・なんてことだったりしたらもう完全に共犯だよね。・・・ってことぐらい宍戸は理解してるとも思うのよね。だからそんなにわかりやすい形で関わってはいないのではないかと。でも「A」を終えた高瀬の自宅にするっと入ってきて「ついに終わった?」と聞き記念写真を撮る様はとても親しげだったわけで。あー思考がぐるぐるするー。
とまぁいろいろと考えはするんだけど(こういうこと考えるのだいすきだし)(そういう意味ではなぜアルファベット順(逆順でもいいけど)に攻略していかなかったのか、その理由を知りたい)、宍戸の役割がなんであるかは気になるしはっきりして欲しいけど中堂の恋人を殺した男を司法の場で有罪に出来るか?なんてことには正直興味はないかなぁ・・・・・・・。それより末次が書いた記事、権力で握りつぶしたUDIと各省庁との癒着問題の行方のほうが気になる。中堂の恋人が殺された連続殺人とともにUDIそのものに掛けられた疑惑ってのがラスト2話の軸になると思ってたのに、末次の記事は世に出ず、警視庁とのパイプや補助金維持のために高瀬の事件でUDIが何がしかの働きをすることを求められるってなことになるんだとしたら、モヤモヤがありすぎる。そういうモヤモヤの上でUDIはなんとか運営できているのだということだとしても、それで終わってしまうようではわたしはたぶん納得できないだろう。よって最終回はイケテツ末次の動きに注目&期待したい。あ、六郎のスパイバレもあるもんね。そっちでも末次がアシストしてくれていいのよ!。