竹吉 優輔『たったひとつの冴えない復讐』


タイトルを見て「たったひとつの冴えたやりかた」を思い出す人も多いでしょうが、登場人物の1人が好きな本であるというだけで、それ以上のことはありません。
特進クラスの黒板にある日突然QRコードが貼られ、読み込むとそれは「誾」と名乗る不気味な物体による告発予告動画であった。という始まりで、いじめられ学校を辞めた生徒についての「問い」が出され、それに答えを出さなければいじめていた生徒=クラス全員の暴露告発動画をネットにアップするというタイトル通りの「復讐」ものなので、たったひとつの冴えたやりかたとはほぼほぼ無関係です。


以下内容に触れています↓↓↓






いじめられ学校を辞めた生徒はその後自殺したとされているんですが、本当に自殺してたら警察が動くし、そうなったらそれが生徒たちに知られずにすむはずがないわけで、それなのにこの物語の生徒たちは誾に告発されてからようやく「自殺した」ことを認識するんですよね。
繰り返すけどそんなわけないだろと、ネット社会舐めんなって話なのに、でもそれが作中ではまかり通っているわけで、とすれば大人が協力しているのではないかと、であればそれは担任教師なんだろうなと半ば確信しつつ読み進めたんですがそんなことはなく、復讐を始めるときに協力というか自殺したことを否定しないでくれと頼まれただけでいじめの認識すらなかったっぽくて驚いた。

もう一人大人がいて、そちらが「誾」である可能性を想定してもいたんだけどこちらもそんなことはなく、いじめとは別に心の問題を抱える主人公に関与する存在であったことそれ自体はいいんだけど、こういう存在がいるのになぜ特進クラスがこんなにもひどい状態だったのだろうかと思ってしまうわけで、その主人公の問題も主人公の話としてしか事情がわからないけど相手は大人だし、祖父の介護を理由に留年した元クラスメイトという存在もいるわけで、総じて大人はなにやってんだよ感が強く、というか完全に生徒間だけで物語が完結するところがわたしには気味が悪く思えた。