歌野 晶午『コモリと子守』

コモリと子守り

コモリと子守り

タイトルにその名が記されてはいませんが、これも舞田ひとみシリーズでいいのかな?。確かこれまではノベルスでの刊行(私が所有してるのは)だったと思うのですが、今回はソフトカバーでの刊行です。
そこに出版上の事情(理由)があるのかないのかは分かりませんが、舞田ひとみが探偵を務める物語ではあるものの、タイトルの「コモリ」というのは舞田ひとみの幼馴染で現在絶賛ひきこもり中の少年のことで「子守」というのはもちろん舞田ひとみのことだと思うのですが、つまりこれはミステリー小説というよりもボーイ・ミーツ・ガール小説の要素が強いんですよね。だからシリーズものであることを前面に出さずこういう形で出したのは正解かなと。
とは言えそこは歌野さんなので、事件自体は大層エグイ。虐待や生保問題、脱法ハーブ、SNSを使い事件を楽しむ一般大衆などなど現代的で胸糞の悪いネタをこれでもかとトッピングし、さすがの後味の悪さ。だけど読み終わってみると一人の少年が少女に出会い助けられ成長する物語・・・ってな印象なんですよね。現実そのものはまだ何も変わってないしこれで何かが劇的に変わるほど人生甘くはないだろう。だけど進みたい道を見つけたことは絶対に悪いことじゃない。少なくとも今よりはずっといい。そういう前向きさが残るのです。一粒で二度美味しい一冊でした。