小路 幸也『話虫干』

話虫干

話虫干

書物(物語)の中に入り込み物語を改変してしまう『話虫』と、話虫を『虫干し』するために物語の中に入り込み、本来ある物語の姿に戻すべく奮闘するある図書館の人たちの物語です。
書き換えられた物語は夏目漱石の「こゝろ」。こゝろの登場人物のみならず書物の中の有名人が出てくる所謂タイムスリップものの亜流と言っていいと思うのですが、そういう職業・・・とはちょっと違うのかなぁ?“そういうことが出来る”という“設定”だけみると三崎亜記さんの作品を髣髴とさせる。
これが三崎さんであればその“設定”をもっと掘り下げ突き詰め、最終的にはホロ苦さであったり薄ら寒さを感じさせるような物語になると思うのですが(それはそれでとても好み)、そこは小路さんなんで、突飛な設定の中でありながらも素敵な友情物語に仕上がってます。