- 作者: 貫井徳郎
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2012/04
- メディア: 単行本
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まず語り部がもうすぐ60歳という女性=女性目線の物語であること。そしてその女性というのが強烈な容姿コンプレックスの持ち主で、劣等感、自己卑下に溢れまくった心情がじっくりねっとり描かれているのですが、特に同性に対する心情描写なんかはそれこそ桐野夏生さんや真梨幸子さんや辻村深月さんあたりを思い起こさせるようなタッチで、まさに貫井さんの中の人変わった!?と思わずにはいられないほどでした。
でも貫井さんのことだから読者がそう感じるであろうことは全て計算の上、その印象もまたこの本全体に仕掛けられたトリックなのだろうと思いながら気がついたら最後の1行でした・・・・・・。
いや、読み物としては充分面白いんですよ!。1人の女の人生というか生き様を描いた物語として読み応えはしっかりあります。
でも・・・でも“そういう物語”ならばもっと隙間を埋めて欲しいと、もっと情念を溢れさせて欲しいと思ってしまうのです。主人公以外のところで。具体的に言うと季子という女をもっと動かして欲しかった。作中でもそういう描写がありますが、女ってのはとにかく見栄と嫉妬の塊なんですよね。いくら自分の男とのことは誤解だとしても、美貌の女流作家としての成功はまた別の話で、こういう性根の女が自分が知ってるかつての顔を攻撃材料にしないわけがない。そういうところまで埋めて欲しかったなーとは思った。名前を出した三人の女性作家たちであれば間違いなくそこをジクジク描くはず。それに、主人公がここまで追い求める男が言うほど魅力的だとは思えない。ニュアンス的には伝わってはくるものの、あと2エキスぐらい足りないんだよなぁ。これは男が思う「モテそうな男」と女が思う「モテそうな男」との違いだと思う。