ミュージカル『SIX』@EX THEATER ROPPONNGI

最高。最高。とにかく最高。それしかない。

ヘンリー八世の「6人の元妻」たちが現代に蘇り、歴史上もっともパワフルなガールズバンドを結成
誰がこのバンドの主役(メインボーカル)になるのか「一番ひどい目に遭ったのか誰か」を歌って決めようということになり、元王妃たちがそれぞれの人生を語り、そして「歴史」を自分自身の手で書き直す

というライブ形式のミュージカルはとにかく全部最高だったんだけど、なにが最高ってまずビジュアルな。クイーンたちの衣装もメイクもバッチバチに強くて最高。
SNSで「ミュージカルSIX」と検索すればゴリゴリにカッコいいクイーンたちの写真や動画が山ほど出てくるんで見て欲しいってか「見ればわかる!!」んだけど、マジで最高。
日本オリジナルだったら絶対にこんな衣装は発想として出てこないと思うんだけど、それをしっかり着こなすクイーンたちの格好良さと言ったらもうもうもうっ!!!。

そして曲。リード曲である「Ex-Wives」は事前に歌唱MVが公開されたし音楽番組でも披露されてたんで聴いてましたが(ソラで歌えるしサビの振りも完璧にできるほど見て聴きこんだぐらいメチャ好き!)、全曲耳から離れない。
観劇できたのはたったの2回なのに公開された歌詞(公開してくれてありがとうございます!!!)を見ながら全曲歌えるってすごくない!?たった2回でメロディーしっかり覚えちゃうぐらいのキャッチーさってマジですごいと思うの。
いろんな曲調でそれぞれキャラにバチコーーーーン!と嵌ってるんだけど、全体を通すとひとつの物語になるんだよね。こんなにも個性的な曲ばかりなのに「ポップスグループ」としてまとまってる(プログラムに各クイーンが実在するどのアーティストをモデルにしているのか明記されていて、ほうほうと頷けます)。
なによりバンドの音に6人の声が乗った瞬間の気持ち良さと言ったらまーーーーじでテンションぶちあがるからね。エネルギーとパッションの迸りっぷりに問答無用でこちとらもヒュウウウウウウウウウ!!って叫ばずにはいられない。
クイーンたちが登場し舞台から去っていくまでほぼ歌いっぱなし踊りっぱなしの80分なんだけど、体感秒よ秒。文字通り「あっという間」に終わっちゃう。

そんでもってキャラな。クイーンたちのキャラがマジのマジで最の高。

ヘンリー八世が6人もの女をとっかえひっかえ妻にしていて(というイメージでした)、そのうちの1人がアン・ブーリンである

持ってる知識がこの程度だったもんで、事前に各元王妃たちに関する最低限の知識を調べて客席につきましたが、知識などなくても全然楽しめただろうけど(そもそも「ヘンリー八世の六人の妻たち」としてひとくくりにされていた女たちに「王の妻」として以外の価値であり人生を自ら語らせる、という主旨であるわけで、そういう意味ではむしろ知らずに見るのが正解なのかもしれない)

アラゴンがヘンリーの兄と結婚してたこととか
二番目の妻ブーリンはアラゴンの侍女だったこととか
シーモアが出産後の体調不良に苦しみながら息子の洗礼の儀式に出席しその9日後に死んだこととか
国内にめぼしい妃候補がいなくなったってんでヘンリーに妃を選ばせるための肖像画を描いたのがハンス・ホルバインであることとか
ハワードもまたクレーヴスの侍女で、かつブーリンの従姉妹だとか
パーが手紙を送った相手がシーモアの兄だとか

ここいらへんは事前に知識を入れておいてよかったかな。それにより初見でも歌詞の理解度は増したと思うから。


1人目の妻「キャサリン・オブ・アラゴン」はスペインの姫で、兄の妻だっただけあってヘンリーより6歳年上。
黄金の鎧のような衣装に身を包み先陣を切って歌う姿は意思の強さと気品を感じさせるんだけど、ソニンアラゴンはより「気高さ」を、鈴木瑛美子アラゴンは「芯の強さ」を感じた。
立ってるだけでザ・プライド!!!!!!!なソニンアラゴンに対し、歌いだすと圧倒的オーラを放つ瑛美子アラゴンといった感じで全然違うんだけどどちらも良い。とても良い。
ていうかアラゴンが歌う「NO Way」のサビに「ありりりりりりり得ない」と訳詩をあてたの超天才。全楽曲中一番好きなフレーズがコレ。


2人目の妻「アン・ブーリン」は酷いw、マジで酷いぜこの女!!。
衣装的には一番カワイイ、いや胸の「B」とかあざとカワイイんだけど、性格めっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっったくそ悪いww。
皆本麻帆のブーリンは常時煽り女で田村芽実のブーリンはアホ女w。
いや2人ともちゃんと解ってて煽り芸と顔芸してるんだけどw(それゆえにマジで酷い)、マジのマジでタチわりいなこの女wとしか思えんし、「悪かったわ、悪気なくって」とあっけらかんと歌う女に妻の座を奪われたアラゴンに同情心が湧く。
でもわたしブーリンが一番好き。皆本ブーリンともめいめいブーリンとも友達になりたいw。


3人目の妻「ジェーン・シーモア」は唯一男子を産み、ヘンリー八世に愛された(まま死んだ)ってなことで、劇中で「前の王妃2人は気が強くてヘンリーに言い返してたけど私はなにがあっても黙って耐えた」と言うだけあってもっとも控えめな衣装で「耐えて耐えて耐えぬくわ」と歌うんだけど、遥海シーモアうまっ!!歌うーーーーーーーーまっ!!。
ブーリンが作った無邪気な悪意(悪気なくってと歌うところが悪気だろうとw)を「歌」だけで一変させるのって相当なパワーがいると思うんだけど(それぐらいブーリンが強烈キャラなんで)、遥海シーモアは歌声そのもので、原田真絢のシーモアは芝居歌でそれをやってのけていた。
パーを除いた4人と比べてシーモアの不幸は「産んだ息子を抱くことなく(出産が理由で)死んだ」というもので、カードとして言ってしまえば最弱だと思うの。でもこのバトルに一番闘争心を持って挑んでるのはシーモアに見えたんだよな。おとなしそうに見えて一番「やる気」ってところが面白いし、そんな女が「耐えて耐えて耐えぬいた」のだと思うと、その末に子供を抱けずに死んだのだと思うとシーモアが歌う「Heart of Stone」は重い曲だよねえ。


4人目の妻「アナ・オブ・クレーヴス」はドイツから嫁いだというのに肖像画と違うからと半年で離婚されるので、アナの曲の前にアナの肖像画が選ばれるまでのすったもんだを歌う曲があるんだけど、テクノ調の曲&演出がめちゃめちゃ効いてた。
肖像画を見て「ナシ」なら左にスワイプ「アリ」なら右にという演出で『容姿』だけで人を判断する・されることがダイレクトに「見える」わけで、現代に最も通じるのはクレーヴスの話なんじゃないかな。
“実際会ってみたら思ってたのと違った”というクソ以外のナニモノでもない理由で言葉も解らず一生遊んで暮らせるほどの金を貰っても使い方がわからない異国で一人生きていかざるを得なくなって、それでも衣装を脱ぎ去って「クイーンはあたしだよ ひざまずきなさい」と歌うのカッコよすぎんのよーーーーー!!
Wキャスト両方見たい気持ちはありまくったんだけど、わたしはエリアンナ信者なので王さまの椅子に座り花より肉!おごってくれなくて結構あたし金持ってるから!なエリアンナクレーヴスにひざまずきたい。


5人目の妻「キャサリン・ハワード」は19歳でヘンリーの妻となり、不貞を理由に21歳で打首となるというなかなかに壮絶な人生を送った人なんだけど、それをハロプロのエースと言われた鈴木愛理に演じさせたのはエグイなと思わずにはいられない。
ハワードが歌う「All You Wanna Do」は自分の居場所を求めて男たちと「繋がる」んだけど、結局求められているのは自分の身体だけだと嘆く曲で、サビを4回も歌うんだけど歌うたびにハワードの痛みと苦しみと怒りがどんどんと増幅し歌いはじめの頃とは違う意味に聞こえ、最終的には全身から血を流しているようなんだよね。
豊原江理佳のハワードはそれを「演技」として見せているのに対し鈴木愛理のハワードはどうしたってアイドルとしての愛理が重なってしまうわけで(だってめちゃめちゃカワイイ。「ほら私カワイイから」とか「子供の頃から私モテモテ」が圧倒的説得力)、最も露出度が高いハワードの身体をベタベタ触る手にリアルを感じてしまって苦しかった。これほどの適役もないよな。


6人目の妻「キャサリン・パー」はヘンリー八世を看取った最後の妻。
それまでの流れを断ち切るように「こんなこと(ひどい目にあったことを競う)をして何になるのか」というパーは、生き延びるため(追放されないため)に何度か結婚するもその都度夫に先立たれていて、ようやっと愛する人と出会い今度こそと幸せを夢見るも王に見初められたことでその恋人に別れの手紙を書いた、という曲を歌うんだけど、愛する男に「もう愛さなくてもいい」と言い、ヘンリーにも「愛さなくてもいい」と言うパーの言葉が5人の元妻たちを「ヘンリー八世の元妻たち」という歴史から自分で自分を解き放つキッカケとなるんです。
斎藤瑠希のパーも和希そらのパーもすらりと長い脚で真っ直ぐに立つ姿が凛々しく、5人のクイーンたちの目を覚まさせる・・・というとちょっと違うかもしれないけれど、そのあとそれぞれの人生を「リベンジ」しようとなるそのフックとして、パーの凛とした美しさ、その聡明さは説得力があった。


からの「SIX」で高らかに歌うそれぞれの「リベンジ人生」がテンションMAXでぶちあがりながらも切ないのよー。
アラゴン修道院行ってゴスペル歌いまくって大ヒット飛ばしまくるし、ブーリンは歌詞を変えてビートに乗せたら大ウケしてシェイクスピアの専属になるし、シーモアはもっと子供を産んでバンド組むし、クレーヴスは地元に戻って友達誘ってみんなでパーティだし、ハワードはウザい先生なんか不要で独学で勉強して歌い続けるし、パーは愛はいらないみんながいればって、それがほんとうの願いなのかと胸がギュっとなるんだけどでも超絶ハッピーで楽しい!楽しい!!楽しいいいいいいいいいい!!で終わるのほんとうに最高。これほど解放感に包まれる観劇体験はそうはない。デトックス効果ハンパないから。


なのでまた観たい。なんどでも観たい。そんな作品と出会えた喜びを一人でも多くのひとに味わってもらいたいのでみんな観ろーーーーー!!。