『重版出来!』第9話

はーっ、いいドラマだなぁ。いいドラマすぎて嫌になっちゃう。
連載が決まったと報告を受けた中田くんの絶叫からの「生きててよかった。生まれてきてよかった」。この瞬間を描くためにこれまでの時間があったんだと、中田くんがそう思えたことに、中田くんにこんな瞬間が訪れたことに、嬉しくて嬉しくて感動に押しつぶされそうだった。
中田くんは母親からの虐待、アユちゃんは漫画によって笑顔を奪われた。二人にとってそれは絶望の日々であったと思うのだけど、中田くんは描くことで、アユちゃんは河さんに教えてもらったことで、共に漫画によってその絶望から救われた。それはかつての社長と同じ。「本が私を人間にしてくれた」というかつての社長と同じなんだよね。
もうね、これだけでもグッときちゃうのに、そんな二人が出会ったのは偶然なんだろうけど、でも黒沢心という人間を介した必然なんだよ。これが見事。
街で人間観察してる中田くんと梨音がすれ違うカットがあったけど、ドラマなんだからそういう偶然展開でもアリだろうに、ちゃんと前フリとしてアユちゃんにいかがわしくないバイトを紹介するという話があって(そこで編集長の可愛さも見せて)、そのうえで二人を出会わせる。だけどやっぱりそれは運命なんだよ。その場で一心不乱にヒロインの設定画を描く中田くんの姿を見たらこれが運命でなくてなんなのかと。
でさ、中田くんがこうまで苦労して産みだした「ヒロイン」。それがどれほどの存在なのかってことを「ツノひめ」で描いてんだよね。妻が出て行ったときですら走らなかった五百旗頭さんを走らせるだけの存在なんですよ。五百旗頭さんを泣かせてしまうほどの存在なんですよ。
一寸先生と五百旗頭さんの話と中田くんの連載が決まる話、これまでも複数の話を並行して描きながらそれがひとつになるという構成でこのドラマは作られていて、その巧さに唸らされてきたけれど、今回はこれまでの話の要素が全て詰まった集大成というか、丁寧に丁寧に積み重ねてきたこれまでの話が中田くんの「生きててよかった」に集約され爆発して昇華した感じで、これぞ『連続ドラマ』だよ。
・・・・・・・・・・って、ちょっと待って!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!五百旗頭さんってバツイチなのかよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!。
ていうかクールで冷静で、穏やかで、仕事が出来る大人の男だと思ってた五百旗頭さんが心の中ではあんな「どうする!?どうする俺っ!?」みたいなことをぐるぐる考えてる人だったなんて・・・・・・。
ちょっと幻滅・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・しませーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん\(^o^)/
予告にあった眼鏡を外して叫ぶ五百旗頭さんがどんな流れでのことなのかドキドキだったけど、かなりオダギリジョーだったけど(笑)、その才能を愛し守りたいがゆえに快くライバル誌へ送り出した自分の気持ちが「ぜんっぜん伝わってねえ!!」って叫びたくなる気持ちは分かるけど、でもなんでわざわざ眼鏡外したよ(笑)。そのアンバランス感がたまらなくってもう五百旗頭さんが愛おしすぎて狂いそう。自分の気持ちをぶつけるために一寸先生の元へ走って向かう五百旗頭さんがカッコよすぎて変な声が出たもん。
何らかの目的のために登場人物を走らせるってのはドラマの定番演出だけど、大概がタクシー乗れよと思うわけですよ。『走る』という行為に急ぐ以外の意味がないからそう思えちゃうんだけど、このシーンはタクシーを捕まえられないという段階を踏んだうえで「妻が出て行ったときも走らなかったのにツノひめのために走ってしまった」と言う台詞を言わせる。走ることにちゃんと意味を持たせてる。もちろんそこにはヒッチポッチの作家先生に自分の気持ちが全然伝わってなかったから、今度はちゃんと言葉にして伝えたい、伝えなきゃという想いがあるであろうわけで(さらに言うとわたしはそこで沼さんの「伝える努力の大切さ」を思い出したわけで)、こういうことの積み重ねなんだよなー。
ていうか今回のメイン回でこれまでは素敵上司・素敵編集者“でしかなかった”五百旗頭さんの『素顔』が見えたことで、ますます異次元ってか、こんなカッコいい人現実にいるわけねーよー!感がますます増量したんだけど、これぞ2.5次元ってことじゃないかな。五百旗頭さんというキャラクターを実写でこれだけいい意味で現実味なく作り上げたこと、これがこのドラマの勝因のひとつだとわたしは思う。
でさ、そんな五百旗頭さんと一寸先生に愛されまくってる「ツノひめ」ってな女に嫉妬するわけですよ。しちゃうでしょ。するとこれまでかまってちゃんでウゼーなこの女としか思ってなかった梨音の気持ちがわかっちゃうわけ。ほんっと上手いことできてるわこのドラマ。
自分がエンペラーに移籍する=ツノひめさまを終わらせるってことになったらツノひめさまのファンである小熊は泣くから言うなと、一寸先生はそう五百旗頭さんに口止めしたけど、それを知った小熊は「泣きたいけど最後まで一緒に走ります」「適当に終わらせることは許しません」とビシっと言い切り、「(ツノひめさまが)好きです・・・大好きです!」と言う五百旗頭さんが泣いた。そんでもって「お前、ツノひめのファンだったのか」「はい」「俺もだ!!」だもん。ツノひめに嫉妬!!!超嫉妬!!!!!!!。