恒川 光太郎『スタープレイヤー』

路上で出会った2メートルの全身真っ白男に突然籤引きを薦められ引いたら1等が当たってしまい10の願いを叶えられる力とともに異世界へ飛ばされてしまう・・・という物語でして、なんとまぁ(笑)って、もう『(笑)』付けるしかないような始まりなのですが、読み進めていくにつれぐいぐい引き込まれていきました。なにこれ壮大。10個のお願い自体もかなり粘着質な設定だし、そこから派生する物語がまじまじ壮大。個人レベルの欲望があれよあれよという間に国家間戦争ですよ。そりゃそうですよね、恒川さんですもんね。
なにがいいって、主人公の設定が「37歳 無職 バツイチの女」ってところ。まさに“読むRPG”なんですが、男よりも女のほうが現実的というか、地に足がついてるもんだと思うんですよね、相対的に見て。で、この手の物語における男性主人公は冒険とか野望とか野心とか、そっちのほうに向かいがちなんだけど、女性主人公は良くも悪くも計算高い。といってもこの手の作品で女性主人公、それもアラフォー世代ってのはほとんど記憶にないんでこれは私のイメージですが。だから異世界冒険モノでもとにかく前へ進むのみ、己の手でこの状況を切り開く!とかそういう感じじゃないんですよね。運よく出会えた庇護者(男性)を上手いこと利用しつつ自分の居場所をしっかり確保する。主人公の他にももう一人同じ力を得た女性もいるんですが、彼女もそう。権力の使い道、志向性であり嗜好性が男性と女性では決定的に違う。それぞれ年齢も地球時代の生活環境も異なるので当然そこいらへんもスターを使っての「願い事」に反映されているのでしょうから性別の違いだけで決めつけるのは強引ではありますが、でもこの作品が他とはちょっと違う感じなのは主人公の基本スペックにあるってことは確かだと思う。そしてそれは私に刺さりすぎるわけで。
続編は2015年夏刊行予定ですってよ。それまでなんとか生きていたい。