小松 亜由美『誰そ彼の殺人』

誰そ彼の殺人

誰そ彼の殺人

仙台にある杜乃宮大学医学部法医学教室に勤務する今宮(准教授)と梨木(解剖技官)のコンビによる法医学ミステリ(帯には<医療ミステリ+本格ミステリ>の超絶的融合!と書かれてる)です。
はじめての作家さんですが(これがデビュー作)、有栖川有栖さんの推薦とあるので手にとりました。

作者の方は現役解剖技官だそうで、「検視」「検屍」「解剖」はなるほど納得の詳細描写。そしてそれが法医学者ではなく解剖技官の目線で描かれているところが目新しいです。法医学者教室を舞台にしたミステリと言えば私的には椹野道流さんの「鬼籍通覧シリーズ」で、法医学者が探偵役でその助手が物語の視点で友人関係にある近しい警察官がいるという設定は似通ってるものの、こちらは主人公(視点)が明確な目標を抱いて臨床検査技師の資格を取って法医学教室に入った女性なので成長物語要素はほぼなく、遺体を調べることで真相を解明することただ一点に焦点が合っているのでプロフェッショナル度がより強い。警察の検視官と検屍を担当する法医学者が高校の同級生で共に女性人気の高いイケメンといういかにもすぎる設定ではありますが、主人公との掛け合い含め今のところは物語における息抜きとして読める範囲内だし。
ただ死因の解明は興味深く読めるものの死因から明らかになった事件の真相がつまらない。つまらないというか「ふーん」でしかない。それが主題ではないものの、もうちょっとなにかを残す真相だとミステリとしてももっと楽しめただろうに。