安達 元一『ハイエナたちの25時』

ハイエナたちの25時

ハイエナたちの25時

フジの25時間に日テレの24時間をくっつけたような目玉番組を放送するテレビ局が舞台で、番組の目玉として用意した難病で余命6ヵ月の少女が生放送直前姿を消し、スタッフ総出で探す中、このテレビ局を除く他局に少女を誘拐した人物からの映像が送られたことで急遽番組は公開生捜索番組になる・・・てな話なのですが、少女の命を“材料”に番組を作る人間たちのエゴを描いているのでミステリーというよりも業界モノ要素の方が強いです。
帯の読者コメントにもありますが、これ恐らく『24』っぽいものを描きたかったんじゃないかと思うんだけど、ジャックバウアーのように強烈かつ明確な“主人公”がいるわけではなくいくつかの立場の人間の視点で描かれる群像劇なので、ヒーローものとしてではなく『24』のようにめまぐるしく局面が変わる「一日」を描きたかったのかなーと。だからこそ25時間テレビ生放送という設定にしたのだと思ったのですが、一応のタイムリミットがあるものの時間の経過がさして重要視されてるわけでもなく、途中からは完全にテレビとは何ぞやみたいな話になっててなんだコレ・・・?と思ったら、作者の人は構成作家(もやっている)のようで「そういうことか」と。
大勢の人間が出入りしていながらも強固なセキュリティによって守られているテレビ局を「特大密室」にするってなアイディアは面白いと思ったんだけどなぁ。