木内 一裕『水の中の犬』

水の中の犬

水の中の犬

元警官の“探偵”がたまたま引き受けた一件の依頼は悲しい連鎖を引き起こし、やがてそれは悪意と暴力で満たされていく。時に流されるかのとごく、時に抗おうとするかのごとく依頼内容にのめりこむ探偵。そしてそれは探偵自身の封印された記憶の扉を開けることに。


荒っぽく言ってしまうと、封印した強烈な過去の記憶が自らの行動原理の根底にあることに無自覚な破滅に向かって進む元刑事の探偵に、クセ者だが腕はいい情報屋と最初は敵だったものの探偵の生き様に感化されやがて同士のような関係になる(なりそうな)キレ者ヤクザが協力するって話で、そこにスパイスとして暴力や銃が普通に加わるんだけど、うーん、なんて言ったらいいのかなぁ・・・ハードボイルド風のアクション漫画って感じなんだよな。前作の「藁の楯」も一見警察小説っぽいんだけど、実は劇画的だった記憶があるので、これがこの人の持ち味ってことなのかな。
・・・と思ったら、この人って元々そっち畑の人なんですね。なるほど納得。それを知らずに真正面から読むと失笑しちゃう場面が多々あってドタバタした印象なんだけど、小説に挑戦してるんだなと分かった上で読むとなるほど、ここはこういう画を描きたかったんだなーって好意的に思える単純な私。