織守 きょうや『ただし、無音に限り』

ただし、無音に限り (ミステリ・フロンティア)

ただし、無音に限り (ミステリ・フロンティア)

「ベストセラー『記憶屋』の著者が新たに放つ野心的ミステリ」と帯にありますが、その作品は未読でして、初めての作家さんになります。
主人公は探偵で、「霊の記憶が視える」という体質で・・・というよくある設定ではありますが、ポイントとしては霊の記憶が霊の目を通して見える(霊が見たものが視える)だけで音やなんかは全く聞こえず、霊と意思疎通(会話)をすることもできないことにあります。霊の記憶が視えはすれどもそれが何を意味するのか、だれが何をして霊となったものが死んだのか、それは主人公が考えなくてはならないのですが、この主人公・・・推理力はあんまりないんですよね。それなのに完全に単独で仕事をするスタイルなので(事件を持ち込む弁護士の知り合いはいますが)、視えたものについて推理をしてくれる相棒的な存在を見つけたほうがいいんじゃないかなぁ・・・と思いながら1編目を読んでいたら、2編目で1編目の登場人物がそのポジションに座ることになり、なるほどこういう構成かと。
どんな形であれ霊が視えちゃうってのはそれだけで「事件が解決できちゃう」飛び道具なので調査・捜査の過程はどうでもよかったりするんですよね。だって視えてんだもん。だからこの手の話は「なぜ死者は幽霊となり視える者の前に姿を見せるのか」、死者と生者の間にある物語を読むものだというのが私の印象なのですが、その点この作品は1編目と2編目が全く違う手触りだったのがよかった。