東 直己『後ろ傷』

後ろ傷

後ろ傷

松井省吾19歳。北大に進学するのが当然のことだと思っていたのにまさかの不合格。ショックで呆然としたままなぜか北海道で一番偏差値の低い私立大学「道央学院国際グローバル大学」“通称グロ大”に進学してしまった。全く学校に馴染めない省吾は、自分の不甲斐なさと周囲の学生をついバカばかりだと見下してしまう自分に嫌悪感を抱く日々。そんなある日、交番内でヤクザに暴行される若者を目撃し助けようとするが、なぜか公務執行妨害で逮捕されてしまう。その日から省吾には警察による行動確認が付き、グロ大でもホームレスの死や名物教授を崇拝するグループに巻き込まれ・・・。


ハーフボイルドシリーズ第2弾。とは言え、私的には便利屋シリーズのサイドストーリーという感じ。思い描いていたちょっと先の未来と天と地ほど違う生活を送る省吾が、ひたすらうじうじと心の中で毒づき、毒づいた自分に対してまたうじうじと文句を言うという爽やかさの欠片もない物語なので、前作のような生き生きとした感じはありません。でも人生谷も経験しなけりゃいい大人になんてなれないと思う。だから省吾の成長記録の1ページとして、これはこれでいいと思う。
北海道警批判が根底にあるのは相変わらず。それが筋に関わるならばともかく、今回もさほど関係があるとは思えないというか、いささか強引な感じは否めなく、毎回毎回うんざりするほどの堕落っぷり腐敗っぷりを読まされてはっきり言っていい気持ちはしないわけですが、東さんの作品を読みたいならばこれはこれでもう一貫した主義主張として認めるべきですね・・・。
グロ大に友達と言える存在ができた省吾ですが、この先省吾がどんな選択をするのか、続きが楽しみです。