誉田 哲也『妖の絆』

「妖シリーズ エピソードゼロ」と帯にあるように、紅鈴と欣治が出会い「血分け」をする物語です。

舞台となるのは江戸時代。紅鈴(と欣治)がどれほど長い年月を生きているのかということは“情報”として理解していたけど、これまでの2作品は現代を舞台にしているので、いざ二人の「始まり」を読むとどれだけの時間を二人で生きてきたのか、その「長さ」を具体的に想像できるし、ゆえに欣治という紅鈴が「失ったもの」の大きさであり重さが尚更よくわかる。

紅鈴と欣治の出会いから、紅鈴が欣治に血分けをし、そして欣治が「闇神」になるなかで、紅鈴を「閣羅」と呼ぶ忍(素破)の一族と戦うことになるんだけど、「介座の剣」の存在は一切出てこないんですよね(介座の剣が闇鬼を斬ることができる「理由」は今作で解明されたけど、それは紅鈴を通して、つまり紅鈴が自らの“弱点”を理解したという描写となっている)。
忍の一族が「閣羅」を捕えその血を得ることを宿命とした経緯からして他にも闇神を狙う勢力はあるんだろうし、紅鈴と欣治の「二百年」を描くという次作はアクション満載になりそうで楽しみー!。