『ダンス オブ ヴァンパイア』@帝国劇場

これまでこの作品を観てみたいと何度も思ったことはあるのですが(特に2011年、馬場徹さんがヘルベルトを演じた時は是が非でも観たいと思った覚えがあるのになんで観なかったんだっけか?)、今回が初めての観劇です。
ようやっと観ることができた理由、それも初日から張り切って劇城へ足を運んだ理由は毎度おなじみ『相葉裕樹さんが出演するから』なのですが、即座に感想を書きたい!!と思った理由は別にあります。相葉アルフレートのことではないのです。


原卓也のヘルベルトやっべえぞ。


これ。これが言いたいから。


ヘルベルトとは初演からずっと山口祐一郎さんが演じるクロロック伯爵の息子でして、吸血鬼でゲイなのですが、植原卓也さんと言えば(誤解を恐れず言うと)ゲイ(というかオネエ)じゃないですか。そして植原卓也さんと言えばアルカードカーミラじゃないですか。植原卓也さんが演じた二大はまり役(だとわたしは思っている)の「ゲイ」と「吸血鬼」が合体したのがヘルベルト。ここに期待せずしてどこでする!?ってなもんですよ。

原卓也さん(以下タッくん)はほんの2か月ちょい前まで同じ帝国劇場で3か月の間「エリザベート」に出演していて、それが帝劇初出演であったわけですが、これがねえ・・・とにかく「合ってなかった」んですよ。演技力歌唱力表現力といったものを語る以前の話として、役に、それどころか世界観にすらまったく合ってなかったのです。衣装を身につけているにも関わらず舞台の上に居る姿があまりにも現代的すぎた。
おそらく「本命」はヘルベルトで、あらゆる意味で相当な重圧であろうヘルベルトを演じる前に場慣れとあとまあ帝劇のお客さんに対する顔見せを目的としてのキャスティングであり出演だったのではないかと思うわけですが、その結果はハッキリ言うけど失敗でした。

与えられた役をモノにできなかったことについてはもちろん役者自身の力が足りなかったことが最たる理由でしょうが、繰り返すけどキャスティングに問題があったわけで(その問題が東宝にあるのかアミューズにあるのかまではここでは語りませんが)、それにより「帝劇に立つ」ことについて現時点でゼロどころかマイナスの状態にあるタッくんが普通に考えて、どう考えてもドはまりするであろうヘルベルトをどう演じるかどう魅せるか、マイナスの印象をどれだけひっくり返せるかに注目していたわけですが、控えめに言って完璧。出てきた瞬間客席の隅から隅まで全員の視線を釘付けにしてみせた。
股間・・・股間・・・・・・!。

わずか5分ないかぐらいの出演シーンながら圧倒的なまでの1幕のインパクトを引きずったまま2幕に突入すると、天蓋付きバスルームのカーテンの奥から鼻歌が聞こえてくるだけで客席が笑い混じりで前のめり、いざカーテンが開く(上がる)とそこにいたのは銀髪をアップにして黒レースに身を包んだヘルベルト。
美!!!。アルフレートをねっとり見つめながら髪をほどくヘル様ってば美!!!!!。

歌はね、タッくん比でずいぶんと上達してるとはいえそこはタッくんなんでね、ファンとしていうけど「こんなもん」だし、ファンとしていうなら「これでも上出来」ってなところですが、ヴァンパイアとして説得力ありすぎるスタイルとゲイとして説得力ありまくりのしなやかな動きでもって欲望を全身から迸らせながら相葉アルフレートに迫るその勢いとヤル気で歌唱力なんざどうだっていいだろ?いいよな??ってなりますわ。
だってこの時のタッくんヘルベルトTバックじゃない・・・・・・?レースのパンツの下Tバックじゃなくってもお尻の割れ目覆う布幅5センチぐらいしかないように見えたんだけどそれで相葉っちアルフレートにまたがったり禅さん教授に杖で打たれて喘ぎゴロゴロしたりと植原卓也の真骨頂ココにあり!!!!!!!。

伯爵の息子だけあって結構頻繁に衣装替えするんだけど、舞踏会でサラをエスコートして登場するときの格好がまた最高でだな。
1幕の赤ジャケット(これがまた!グレルを思い出しちゃう!!)も2幕の黒レースも完璧なる着こなしっぷりだけど、この場面の「正装」がとにかく素晴らしい。『伯爵の息子』であることが一目でわかる気品溢れる立ち姿、立ち振る舞いで、エリザベートでは悪いほうに出ていた異物感がこの作品では伯爵の息子としての特別感となり、まさにお誂え向きの完璧オブ完璧なんですよ。

このシーンのこの世のものとは思えない、それこそ二次元にしか存在してないレベル(人外というよりそっち)の植原卓也エリザベートでガッカリした全ての人にぜひとも見ていただきたい。
(なんでTdVではこんなにドハマりしてるのに同じような銀髪ロン毛にマント装着した人外が出てくるエリザベートでは世界観にフィットしなかったのか謎すぎる・・・)



相葉っちのアルフレートはこちらも期待通りのハマリっぷりです。
もっとアホの子っぽいのかと思ってたけど頭は悪くなさそうだし、ヘタレではあるけどそれはヴァンパイアの胸に木杭を打ち込むことがどうしてもできないってだけで(あとまあ伯爵の城が「こわいよー」とか言うけど)人間としてそれはマトモだと言えるだろうし、教授に対する尊敬もサラに対する恋愛感情も真っすぐな青年という感じでラ・カージュ・オ・フォールのジャン・ミッシェルとはまた違う可愛さ。
ていうかもうとにかく可愛い。ゲネや会見の写真ではそのカツラどうなん・・・と思ったビジュアルもまったくもって問題なし、帽子被るとむしろ可愛さ5割増し!!だし、見た目のみならず表情も動きもぜんぶ、どこもかしこも可愛くって、そういう意味では相葉アンジョで相葉っちを認識した人を「え?これだれ?」と真顔にさせるかもしれない。それぐらいアンジョルラスとは真逆。
そのせいか、初日はずいぶんと緊張していたようで、1幕は台詞はいいけど歌は全くと言っていいほど声がでてないし音程も不安定だしでどうした相葉っち!?となりましたが、2幕になるとだいぶ持ち直し、この調子では歌えるのかと本気で心配した2幕の「サラへ」はしっかりと力強く歌い上げててホッとしたー。これはまあ怪我の功名的なヤツだけど、1幕がダメだったせいでアルフレートの決意と覚悟がより鮮明に伝わってきたし、この曲さえキメることができればとりあえずは大丈夫だろう。

カーテンコールでもほとんど笑顔がなかったんで、おそらく相葉っちのなかで初日の点数は相当低かったでしょうが、今の相葉っちに対してはまったくもって不安はないので!本番を重ねることで相葉っちのアルフレートがどんな進化を遂げるのか楽しみでしかない!。