ミュージカル『黒執事−Tango on the Campania−』@赤坂ACTシアター

いやあ・・・サーカス編に続いてほんとに豪華客船編を舞台化しちゃったよね・・・・・・!セバスが最も「いろんな貌」を見せるのが豪華客船編なので出来ることなら古川雄大のセバスチャンでぜひとも見たいとは思うものの内容が内容であることだしさすがに難しいだろうとも思っていたわけですが、見事にやってのけてくれました!!。

AKANEさんの存在感と歌唱力で圧倒したリコリスやキャストの身体能力で魅せたサーカス編と比べて“総合力”として『巨大氷山にぶつかり沈没する豪華客船内でゾンビと戦う一方で死神&死神VS元死神VS悪魔が三つ巴バトル』というあらゆる意味で最難関と言っていいであろう原作をよくもまぁこれだけしっかり舞台として作りあげてくれたなと、感動というより驚嘆です。

そりゃあチープなところはあります。豪華客船内に見えるか?と言えばそれはそうでもないですし、階段上のセットなので「上下」の動きしかなく単調でしたし、でも幕や布やスクリーンを上手く使いセットを細かく動かすことで暗転することなく2時間という短い時間の中でこの原作を余すところなく舞台として再現してみせたのはほんとうにすごい。

まぁゾンビ人形はちょっとアレだったけどw。沈没する豪華客船がオモチャみたいな映像だったけどw。なによりビザールドールの海に浮かぶボートの図がひとたび面白く見えちゃうともう古川セバスがカッコよければカッコいいほど滑稽さが増すという複雑なシーンになっちゃってたけどw。台車に乗るリアンは好きw。

激しい内容に合せてかこれまでよりも激しめの楽曲もすべてよかったし、アンサンブルも大勢いたので迫力があったし、いつもながら衣装は完全再現だし豪華だし、ミッドフォード家完璧だし、2.5舞台としてついにというかいよいよというか、ここまで来たか!!となんども震える瞬間がありました。

(場面の前後はあるものの全体の流れとしては)忠実に再現してはいるものの説明不足というか舞台化するにあたり説明はしてるんだけど、例えば舞台化としてはここで初めて登場するシエルの婚約者・エリザベス(リジー)が『どういう女の子』であるのかとか、さすがに舞台だけ見てもそれをちゃんと理解することは難しいだろうわけで、だからリコリスやサーカス編ほど、マダムレッドやサーカス団のメンバーたちほどその感情であり心情が伝わってこない・・・ところはどうしたってあるけど、だからといってそのために舞台オリジナルの話やら台詞やらを加えることなくそこはもう原作を読むしかないよねと、『2.5次元舞台』なんだから原作を読んでナンボだろと、いい意味でそう割り切れる潔さを感じて、それはきっとここまで長年生執事を作ってきた自信があるからなんじゃないかな。そういう意味でも「ここまで来たな」と、初演からずっと見続けてきてよかったー!という謎の充実感。

ところでわたしはコミック派なので昨年末に発売された26巻でようやっとシエルのあれこれを知ったところなのですが、そうと解っての豪華客船編を観ると(読むと)あれもこれも『そういうことだったのか!』と驚かされます。セバスのシネマティックレコードの中で「偽者」が「本物」になるという歌詞があるんだけどその意味の深さと重さたるや・・・!。

この落下する坊ちゃんを追って手を伸ばしたセバスの背中を葬儀屋のデスサイズがぐっさり!からのセバスのシネマティックレコードをどう演出するのか、下手すれば舞台の流れがそこで切れてしまうのではないかとやや心配していたのですが、これまたとても良かった。映像をメインにテンポよくこの場面を紛れもない『ミュージカル』として演出したことは曲と歌唱の良さと併せてこの作品のクオリティを高めるひとつの要因になってると思う。

あ、そうそう、氷山に豪華客船が追突して沈没すると言えば・・・な『アレ』をグレルとロナルドがパロるんだけどw、ここは「音」と「動き」を見せられる舞台でありミュージカルだからこその場面になってて面白かった&すごく良かった。原作に沿って動かせばタッくんグレルは最高オブ最高です。

ていうかタッくんさー、歌上手くなってやんの!(注:植原卓也比で)。これまでは歌いながらダンスとか歌いながら殺陣とかハードな演出だったのに対し今回はほぼ歌に集中できるからってのはあるかもだけど(足元でビザールドールがゾンビらしからぬ激しい振りを踊ってるんで一緒に踊りながらばったばった斬り刻みまくってほしかったー)、それを差し引いても声の出し方が明らかに今までとは違う。だって歌詞聞き取れるもん!!。前作のサーカス編では不在だったから(見終わって初めてグレルが出ないことを知ってぼんやりした思い出w)リコリスからそれなりの時間が経過してることになるわけだけど、クオリティを維持してるどころかレベルアップしてくるタッくんやっぱり好きほんと好きだいすき尊敬してます。唯一のマイナス点だった歌唱力まで装備した(注:植原卓也比で)タッくんグレルはもう向かうところ敵ナシです!!!。

心配だったヒデ様のドルイット子爵は怪我の影響を全く感じさせない安定のド変態でしたが、流れ的に混じっても不思議じゃないかったもののアウローラ帝国建国ソングでシエルもセバスもグレルもロナルドも、それから背後で葬儀屋まで一緒に踊ってたのはまだそこまで激しいダンスを踊るのは無理だからだったのかなぁ?(これまでのことを考えたらここでゾンビ引き連れて全力トンチキソングを歌って踊ってしない理由はないと思うしw)。なんにせよここでものすごいいい笑顔でかわいい振りを踊るタッくんグレルと無表情でかわいい振りを踊る古川くんセバスがシンメでわたし500回ぐらい死にました。ていうかセバスがクソ長い脚をワイルドにガバっと広げて踊るのセクシーカッコよすぎて5万回死ねる。

今回セバスはほぼほぼ全編血の海地獄で大暴れ状態なので総じて激しめなんですが(身体と足の角度がまるでコンパスのように美しい回し蹴り多用で眼福の極み・・・!)、両膝ついて絶叫の勢いで歌い上げる古川雄大などというものを拝めましてですね、なんかもう・・・ほんともう・・・・・・言葉にならないです。まだまだわたしの知らない古川雄大がいるんだろうなぁ。・・・・・・と5月に想いを馳せつつ、でもずっとセバスを演じ続けて欲しいオタク心。