『ミュージカル「黒執事」―地に燃えるリコリス―』@六本木ブルーシアター

これまではオリジナルの物語だったのに、今回は原作のマダムレッド編。そこにどんな裏事情・思惑があるのかはわかりませんが、結果だけ見ればその判断は正解だったと思う。原作の物語だけあってこれまでで最も「黒執事」でした。
その理由は明らか。これまで同様マダムレッドという“ゲスト”の物語ではあるものの、ちゃんとセバスチャンとシエルが“主役”であったから。ちゃんとセバスとシエルが物語の中心にいたから。

椅子こそ無駄に立派なものの造り自体は内外ともにチープな空間(劇場)に見合ったセットにデザインは素敵でも安っぽい生地を使った衣装、それから全く印象に残らない楽曲とか不満がないわけじゃないんだけど、セバスムード歌謡歌わないし葬儀屋極上の愛を求めないってだけでも心穏やかに観られるし、なによりグレルが!グレルが初めて物語に関わってるというかちゃんと存在意義があって、まぁそれはマダムレッド編と聞いた瞬間から頭では“わかってた”ことだけど、それでも実際に妙な女装することなどなく必要不可欠な存在として物語の中で躍動するタッくんグレルを見たら嬉しさと興奮を抑えるのが大変でした。これまでもタッくんグレルはグレルだったけど、これまでのグレルは見せ場を作るために女装させられたりと“無理やり感”があったのね。でも今回はちゃんと“物語の中での要素の1つ”として存在してて、4回目にしてようやっと「本当のグレル」を見ることができた。これだけでもう胸がいっぱいです。

で、タッくんのグレルがこの手の舞台において有数の2.5次元っぷりであることは異論の余地がないと思うのですが、そのパートナーであるマダムレッドがグレルとはまたちょっと違う次元で本物だったのよね。顔ちっちぇーわ歌超うめーわでまさに大輪の真っ赤な薔薇。元宝塚の人を何度か舞台で拝見してますが、役と役者がこれだけドンピシャに嵌ってるのは見たことがないです。すべてにおいて素晴らしかった。あまりにも素晴らしすぎてセバスとシエルのみならずグレルですらその存在感に圧倒されてしまった感があるのはもう仕方ねーよ。

だがしかし歌は・・・・・・これはマダムレッドの技量に関係ないっちゃないんだけど、セバスVSグレル戦の歌の酷さは仕方ないじゃ済まされない・・・・・・。
まず曲な。無理やりつっこんだ初演でもそうだったんでセバスとグレルのバトルが歌いながらになるであろうことは予想できたもののその曲調がなにをイメージしたのかわからないというか、なんでそんな歌い難い曲にしたよ?と。赤黒戦は数々のキメ台詞萌え台詞があるのにそれぜんぶ歌詞として歌にのせちゃってるから聞き取れなくてだな。特にグレルが・・・・・・・。原作で言えばマダムレッドの葬儀のシーンとともに、舞台で言えばマダムレッドのシネマティックレコードとともに赤黒戦はこの作品(マダムレッド編)最大の見所であるわけじゃないですか。動きもだけどセバスとグレルのやりとりも重要なわけじゃないですか。原作しっかり読んでるから聞き取れなくても脳内で変換再生余裕でしたが、みんながみんな原作読者というわけではないよね?。だからもっと言葉を届けるための工夫をしてほしかったなと。難しいなら難しいで耳に残るメロディーやフレーズがあるならまだしもそれもないし、もうめんどくさいからwぼかさずハッキリ言うけど4回目となればタッくんの歌唱力及び滑舌がアレなことは解ってるだろうにもっと歌い易い曲にしてやれよと。マダムレッドの歌唱が素晴らしいだけに余計にそう思えてしまって。

歌がダメならせめて動きは・・・って、これもなぁ・・・・・・。ポイントポイントで原作の動きを忠実に再現してはいるんだけど、キメポーズはいいとしても繋ぎがないに等しいんだよね。流れがないの。そしてやっぱり言ってることと連動してこその「キメポーズ」なんだよね。また初演を持ち出しちゃうけど月を背に(月の演出はなかったけど)(月を背負って戦う二人ってのがときめきポイントなのにー)グレルのデスサイズを足で押さえるセバスの図なんかは初演のほうが断然カッコよかったし。タッくんグレル好きとしては念願の赤黒戦(フル)なわけで、タッくんグレルがどれほどのキチっぷりを見せてくれるのか、自分をジュリエットに見立てながらもピンチを脱するためには頭突きという男らしすぎる手段に出ちゃうそのギャップをどう演じてくれるのか、楽しみで楽しみでたまらなかっただけにもうちょっとどうにかならんかったかなーと思わずにはいられない。

それとは別の意味でコイツどうにかしろよ(笑)だったのがヒデ様のドルイット子爵。前回ヒデ様こしゃくをわたしは大絶賛したわけですが、今回暴走しすぎだろw。出番自体は原作通り(+闇オークションに参加してた客たちともどもヤードに捕まった“後”、アバーライン&ハンクスに取調されるも話まったくかみ合いません^^^^ってな舞台オリジナルシーンが追加)なんだけど、曲の途中でパーティ客に挨拶したあと「「2番いきまーす!」ってwww。「2番」てwww。

つーか♪私を食べて もぐもぐもぐ ってこしゃくの歌ひでええええええええ!。それに合わせて股間突きだすわ四つんばいになってケツ突き出すわ、優雅さのかけらもないただの色情狂で、さすがにこれはちょっとなぁ・・・。どんだけ変態でもドルイット子爵は下品であってはならないんだけど、今回はそのラインを越えてしまった感がある。
でもわたしの感想メモには『こしゃく曲ください!!サントラ!!!!!』ってデッカイ字で書いてあったよ?あれれれれ?(笑)。あと『ヒデ様達央さんのことディスってる?w』とも書いてあった(笑)。

初めてヒデ様のドルイット子爵がお披露目された時あまりにもアニメ準拠で客席がざわっとしたんだけど、その再現っぷりは今回も健在なんだけど、前回以上に、もう前回の10倍ぐらい、ねっちょりとした喋り方が過剰になってんだよねw。さらに原作では駒鳥シエルの手を取り手袋越しにキスしたり腰に手を回すぐらいなのに、身体を撫でまわすどころか二の腕、つまり手袋してない生肌のところを舐めてたぐらいなんで喋り方のみならずこしゃくの変態度をガン増しさせたキャラ作りということなのでしょうが、やりすぎ感は否めないw。
でもヒデ様は東京楽のカテコで「黒執事は大好きな作品だし、大好きな大好きな大好きな役をまたやれてうれしい」っつっててw、もうそれが本気の本気の言葉だってのが伝わってきてw、それ聞いちゃうと変態こしゃくをこんなにも愛してくれてありがとうヒデ様!!!ってなっちゃうのw。

そんな感じで、何からなにまで納得満足というわけではないものの、今回はWチャールズの存在以外は展開(流れ)といい台詞といい「原作に忠実」で、脚本・演出が独自の解釈や感情を加えることなくほんと「忠実」に「再現」してくれたんで、そういう意味ではストレスなく『黒執事』の世界を堪能することができました。

黒執事の世界といえば、今回セバスとシエルの身長差が素晴らしすぎた。今回のシエル役の子はシエル史上最年少で、ほんと子供こどもしてるのね。そんな坊ちゃんを優也セバスがヒョイっと、まさに「ヒョイっ」という擬音が見えるほど軽々と抱えてくれちゃうわけですよ!!!。これ最高すぎた。

てか今回優也身体絞ったよね??。公演を重ねるごとにがっちりというよりもムッチリしていく優也セバスでしたが、今回は下半身が前回よりも明らかにシュッとしててそれだけで満足しちゃったんだけど、ベスト姿が!!!優也セバスのベスト姿まじまじ最高すぎて!!!!!。適度に肩幅があって、ホルタ―タイプの胸元からしっかりとした胸筋の存在が窺えて、でも腰は細くお尻もちっちゃいと完璧なる後ろ姿!!!。

今回もシエルとセバスの契約シーンから始まるんだけど、大きなチェスの駒(ナイトの駒だったのはシエルにとってのナイト=騎士という意味合いなのだろう)(造形はどうあれ駒を使う演出はそれぞれ意図がわかったので悪くなかったと思う。造形はどうあれ)をパカっと割って出てくるという微妙な登場だもんで(これ、最近どっかで観た演出だなーと思って暫く考えてたんだけど、ラストフラワーズでションベン小僧の像から出てきたサダヲだ!!って思いついた瞬間ちょっとぼんやりしてしまいましたw)いきなりややテンション下がるんだけど、このベストシーンでぐーんと上がったわw。

でもでもこの舞台最高のときめきはベストセバスではないのだ!!。
切り裂きジャックの犯人がグレル・サトクリフであることが明らかになり、セバスにそろそろ正体を現したらどうですか?と言われての変身シーン、セバスたち(客席)に背を向け立っている黒髪グレルが一瞬の暗転の後赤髪になって(ここで役者が入れ替わる)、背を向けたまんま身支度を整えるってな演出なんだけど、黒革手袋を装着するタッくんグレルですよ!!!。背中越しに手袋してるだけなんだけどその手つきが残虐なの!鬼畜なのよ!!。これたまらんすぎ。絶対ここアップになると思うからここを思う存分観るためだけに円盤買ってもいいと思うぐらい素敵すぎる手袋装着だったわー。

初登場のWチャールズはこしゃく主催のパーティでのエリザベスの代わり要員でした。物語としてはそうまでして出す理由はないわけでそこにはとうぜん何らかの思惑があるのでしょうが、Wチャールズのキャラを変えることなく(崩すことなく)うまいこと組み込んだなと。てかふたりとも声と喋り方が良平くんとまえぬすぎて(アニメではまだほんの一言しか喋ってないからわたしもそんなに良平くんのグレイとまえぬのフィリップスを聞き知ってるわけではないけれど)、ほんの少しの出番なのによく研究したなと!ちょっと感激してしまったわ。

つーかWチャールズもウィルも、この界隈ではそれなりに知られた役者をこれだけの出番しかない役で使うとかある意味贅沢だよな。人気キャストだからとそれこそ前回のグレルのように無理やり出番作ったりしなかったことを評価したい。千秋楽のカテコで言ってたけど輝馬ウィルなんて出番まで「2時間弱待ちです」ってよ!?。優也に「いつ衣装に着替えてんの?」って聞かれて「マダムレッドがグサって(刺された)されたあとぐらいですね」ってマジかよとwww。それまでジャージ姿でみんなの邪魔にならないよう楽屋に籠ってるとかかわいそうすぎるw。

カテコで思いだしたけどアンサンブルも含め優也が一人ひとりを紹介したんだけど、Wチャールズは「Wチャールズ」って紹介されたのね。そしたら先に挨拶しようとしたもっくんに広瀬くんが「一緒に(挨拶)するんじゃないの?」っつっててクッソクッソ!!(かわいすぎて悔しいw)。

あとあと最後の最後でついにセバスがぼっちゃんをヒョイと抱えて!!客席がピギャーーーーーーーー!!ってなったのを見てマダムとグレルがこそっと相談してると思ったら、W投げキッスいただきましたああああああああ!!!。今回カテコで優也とタッくんのイチャコラがまったくなくてですね、それはちょっと不満というかお預け感喰らった感じなんですが、そのぶんマダムとグレルがあれやこれやしてて、わりと天然?なマダムのお世話するグレルの図はそれはそれで面白かったw。


黒執事の感想をいつもこれで締めてる気がしますが、タッくんがグレルを演じ続ける限りこれからもわたしはどこへでも(どんなに会場が嫌いでも)馳せ参じる所存です!!。