伊坂 幸太郎『サブマリン』

サブマリン

サブマリン

「チルドレン」の続編です。陣内さんが超相変わらずなのは当たり前というか、そうでないと逆に困るといった感じですが、職場が変わったらまた陣内さんがいた武藤はなんていうかもう・・・どんまい(笑)。
ていうか、武藤二児の父?え?まじで??。
“チルドレンから12年”というのは現実のことであって作中もそうだというわけではないというか、作中でそれをはっきり明言されている箇所ってなかったように思うのだけど(だいたいの計算はやろうと思えばできそう)、永瀬と優子の関係も変わってるからそれなりの時間が経過してはいることは確かなんだけど、そのあいだどれだけの仕事をこなしどれだけのことを考えたり悩んだりしてきたんだろうなーと思わせられる武藤の成長がなんだか眩しい。
でも陣内さんは変わらない。チルドレンが連作短編集であったのに対し今作は完全に長編かつ武藤の視点で描かれているのですが、武藤がこんなにもあらゆる意味で変わったというのに、そんな武藤を通して存在する陣内さんはぜんぜん変わらない。変わらずにいられることを羨ましく思うと同時になんか安心した。
長編だけあって伏線の回収っぷりが凄まじいです。たぶんこの表現間違ってると思うんだけど、言うならば『芋づる式』。引っこ抜いてみたらあれもこれもが先っちょにぶら下がってて、ここも繋がってんのかよ!?と。大漁すぎて笑っちゃう。
今回、縦軸となる武藤と陣内が関わる少年犯罪はかなりシビアなんですよね。そこに横軸として経過観察中の少年の話が絡むんだけど、そこここに悪意が散らばってたりする。でもそれが現実で、そんな現実だけど、でもいいこともある、いい人もいる。かもしれない。そう思って生きていくしかないんだよね。