
- 作者: 恒川光太郎
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/05/31
- メディア: 単行本
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特殊な世界観、特異な設定には(私の中で)定評がある恒川さんではありますが、今作はこれまでの恒川作品とは特殊・特異の方向性が違うというか、まるで三崎亜紀さんが描くような「非日常感」で驚きました。
発端はブラック企業で働くサラリーマンの何もかも放り投げてどこかへ行ってしまいたいと思う現実逃避なので、日常からの地続き感があるんです。まずここが違う。どこかもわからない異世界に放り込まれた男はそこで「日常」を過ごし、突然世界が変わってしまった地球ではそれでも「日常」が続いてる。どちらも明らかに「異常」であるはずなのに、それでもそれが「日常」になる。
物語の設定・描かれている出来事に現実味などまったくないのに、それでもそこにリアリティを感じてしまう。物語のなかで地球上の生物(生命)を次々と取り込み呑みこんでしまう謎の生物が例えば放射能を可視化したもののように思えてしまう。それが一人の男=人間の生み出したものであることも含め、作中の言葉を借りると物語の「核」の部分に現実を見てしまうのです。この感じはこれまでの恒川作品にはなかったもので、最後のページまで貪るように一気読みしてしまった。