川澄 浩平『探偵は教室にいない』

探偵は教室にいない

探偵は教室にいない

第28回鮎川哲也賞受賞作です。
北海道に住む五人の中学生の物語で、語り部となる女子を含む男女四人は同じ中学でバスケ部に所属していて、語り部女子とは母親を通じ幼少時に交流があったものの違う小学校に通い始めて以降交流がない幼馴染の男子が探偵役です。探偵役は変人で頭が良すぎるために不登校中とかキャラクター設定的に目新しさ皆無だし、描かれる謎と言えば「名無しラブレターの送り主は誰だ?」とか「友人が合唱コンクールで伴奏を弾かないのはなぜか?」とか、中学生らしくはあるけど『日常の謎』としてもかなり小さなものばかりで、前回の受賞作が昨年のミステリー界の賞であり話題を総なめにしたと言っても過言ではないであろう「屍人荘の殺人」であることを考えると、面白さの判断以前に鮎川賞ってやっぱりよくわからない・・・・・・というのが読み終えて最初に思ったことでした。
作品自体は「こんな口調の中学生いないだろ」というツッコミ含め『中学生が主人公の日常の謎モノ』から受ける印象のまんまで間違いないという感じですが、特徴としては舞台が北海道であるということ。“都会ではない地方都市の中学生”という設定のためだけなら北海道でなくとも構わないだろうとなりますが、謎解きための必要要素として機能しているので北海道であることにちゃんと意味がある。しかも謎解きが先にせよ北海道という土地が先にせよ、嵌め込んだ感がなくて物語の流れが自然。ここは評価すべきポイントであろう。
ついでにいうと作中で「セイコーマート」が登場するところもいい。今年起きた北海道地震の際、セイコーマート神対応だったというニュースを目にし、セコマ(と呼ばれているらしいですね)さんかっこいいなあ!と思った記憶もまだ新しいので、なんだかうれしくなった。
連作短編集という構成で、そこまでの三章でバスケ部の三人それぞれの内面というか違う一面を描いているので、語り部自身の話で初めて探偵役の視点でも描かれる最後の章は二人の物語であり、選考委員の北村薫さんが選評で触れてらっしゃいますがヒロイン(語り部の子ってヒロインなのか?)の高身長とか、探偵役が不登校であるといった設定がそこで劇的な働きだったり展開だったりをみせるのだろう(そのための設定であろう)と期待したので、特になにもなくここはキャラクターの設定ってだけだったんだ・・・ってところは残念というか肩透かし感がありましたが、全体の印象としてはストレスなくすいすいと読み進めることができました。次作もぜひ読みたい。