前川 裕『死屍累々の夜』

死屍累々の夜

死屍累々の夜

東大出の助教授(その頃の時代)でありながら妻である暴力団組長の娘を殺害し、出所後都内の老舗旅館の関係者を次々と殺して乗っ取り、最後は九州の洞窟で女達と集団自殺を果たした男について、男に捜査状況を流していた警察官の甥であるルポライターによるノンフィクションという形式で描いた作品です。
とにかく得体の知れないという印象で、それは偏に「木裏」という犯罪者からくるもので、それは“真相”が明らかになる最後の追記を読んでも変わることはなかった。
そういうことであるならばもっと人情に寄せるというか、人間らしさをチラ見せしながら描くこともできたと思うのだけど、最後までそういうものを一切排除し描ききったことで私にとってその得体の知れなさとともに心に残る作品になった。
人間性を疑われるかもしれませんが・・・・・・
『死屍累々』ってカッコいい言葉だよねぇ(うっとり)。