柚月 裕子『風に立つ』

南部鉄器の工房を営む父親が突然「補導委託」として問題行動を起こし家庭裁判所に送られた少年を一時的に預かると言い出したところから物語は始まります。

職人である父親から愛情を受けずに育ち今は父と共に工房で働く息子の悟にも「親」に対してわだかまりがあって、父親の問題少年・春斗に対する言動に戸惑いつつも一つ屋根の下で寝食を共にし働くなかで春斗に対する考えを含め悟の心情が変わっていき、息が吸えない毎日を生きていた春斗もまた自分の夢を明確にしていくという、二組の親子を描く物語なんですが、南部鉄器の工場で働く健司という職人と八重樫というバイトの兄ちゃんのキャラクターであり存在がとてもイイ。
春斗という少年に対する距離感、そして孝雄と悟親子に対する関わり方、どちらも絶妙なんですよ。二人セットで。
実写化することがあったらまず真っ先に八重樫くんをだれが演じるかをチェックしちゃうな、ぜったい。