『silent』第4話

この作品全体を通してのテーマはそれとして、今回単体で言うと耳が聴こえなかろうが繋がりは繋がりだし、耳が聴こえても伝わらないものは伝わらない、ということかな。
なんだかんだと理由を付けて恋人や仲間を「切った」想だけど、手話が使えなくてもアプリを使わずとも「ハイタッチ」ひとつで『あの頃と変わらない』と思えるし、想と違って“普通”に話が出来るのに紬の『気持ち』は湊斗に伝わらないし、湊斗の『気持ち』もまた紬とはすれ違ってしまうのだと。

でも「あの頃と変わらない」と思ってるのは聴者(だから)であって想が内心どう思ってるのかはわからない。
春尾先生が言ったように「どうしたって(耳が聴こえる者には)解らない」ところはあるよね。
そして奈々と友人が語っていたように、聾者の間にも「解りあえない」ものはあるのだろう。

家族愛や友情であればその「解りあえなさ」を内包しつつも結びつき繋がり合い続けることができても(お兄ちゃんのところに行ってきたことを母親に「言ったでしょ」「言ってないよ」と母親に聞こえないよう『手話で会話する』父親と妹ってのはまさにそれを描くシーンだよね。手話をナイショ話に使うだなんて不謹慎とか傍から見れば思うかもけど、以前はどうあれ今現在この家族にとっては単なる「会話の手段」であってなにも特別なことなどない、ということだろう)、恋愛となると途端にゴチャゴチャするのはなんなんだろうなぁ。

完全に耳が聴こえなくなってからの佐倉くんの「3年間」についてあんな顔であんなことを言われたら、その「3年間」はイコール自分が紬と付き合っていた時間であるわけだから『紬の気持ち』を勝手に解った気になっちゃって、そもそも周囲からも釣り合わないと言われてたわけだし『想に返す』と考えるのもまあわからではないけどさ、やってることは悲しませたくないからと一方的に別れを告げた想と同じなんだよね。紬の気持ちを知ることから逃げてるだけ。
そして想の気持ちも勝手に決めつけてる。ちょっとぐらい性格歪んでたらよかったのに病気になる前の「あの頃」のまんまだとわかったからって、自分が身を引けばまた想と紬が「あの頃のように」付き合えると思い込んでる。思い込もうとしてる。
いくらみんなで集まってフットサルを楽しくできたとしても、想は確実に「あの頃」とは違うのに。

そういうのぜんぶめんどくせーなーと思っちゃうんだけどさ(正直な話、湊斗は紬と別れて高校時代の仲間とは無関係の「大人になった今の湊斗」を見てくれる人と付き合うほうがいいと思うし、紬と想は耳のことを踏まえたうえで改めて付き合いましょうとお互いが合意するなら付き合えばいいんじゃん?としか思わないので)、でもアプリ使って「会話」ができちゃったもんだから「話ができてる」気になっちゃってアプリのエリア外で話続けてる湊斗に「湊斗」と想が呼びかけた瞬間はちょっと泣きそうになってしまった。ここで想が「声を出す」のかと。
前回湊斗がボロ泣きしながら「もう一度「想」と呼んで振り向いてもらいたい」と言ってたのに対し、湊斗の言ってることがわからないことを気づかせるためとはいえ、振り向いてもらうために紬にあれだけ取り乱されたときも出さなかった声を「かつての親友の名前を呼ぶ」ことで出すかー!って、ここは素直にギュンとなった。

「付き合っていた人から突然別れを告げられ、再会したらその人の耳は聴こえなくなっていた」ではなく「大切な親友が突然消えてしまい、再会したら耳が聴こえなくなっていた」でよくないか?と思うところがあったりしたんだけど、それだとここで「名前を呼んでくれた」ことで終わっちゃうよなと、耳が聴こえなくてもあの頃と変わらないんだから親友としてつきあっていこうぜで終わってしまうから、そこはやっぱり恋愛を絡ませないと10話はもたないなと理解しました。めんどくせーけどな。

あ、そうそう!めんどくさいだろうと思ってた奈々はこれ想と紬の邪魔をするポジションじゃないっぽくない?。
ある程度の年齢になって耳が聴こえなくなった想のような人たちと、早い段階から聴こえない自分たちとは「違う」と言ってた通り、そこには明確な一線があるのだとしても、想のことが「好き」ならばここで友達を使ってそれを描くんじゃないかと思うんだよな。でもそんなことはなかったし、「友達」という言葉に含みもなかったように感じた。

で、ここで“聾学校の同窓会”の話がでて、手話スクールで春尾の同僚からも“聾学校の同窓会”という単語が出た。もしかしてここ繋がってるんじゃない?。同僚教師は盲学校で教師もやってて、その教え子が奈々たちだとか。
そんで春尾はその聾学校にボランティアをしに行って聴覚障がい者に恋をしたのではないだろうか。
でも聴覚障がい者である恋の相手に聴者である春尾には自分のことは解り得ない的なことを言われ、別れを受け入れるしかなくて、その恋の相手が奈々ってことはないだろうか。
それぐらいじゃないと今のところ風間俊介をキャスティングした意味がないんだけど、でも風間俊介にはそんな恋愛絡みではなくもっとヤバイなにかを秘めていてほしくはあるんだけどねw。