- 作者: 黒川博行
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2017/03/16
- メディア: 単行本
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二人は大阪府警の「元」刑事。悪事が祟ってついに堀内は依願退職、伊達は懲戒免職となり、現在の立場としては競売屋の調査員(正式には伊達だけが調査員で、堀内は伊達に頼まれ協力しているという形)。が、やってることは良くも悪くもこれまで通り。これまでと違うのは『会社』に報告することなく自分たちの判断でもって“シノギ”ができるということだけ。でもそれは桜の代紋という後ろ盾を失くしたということなわけで、そんな二人が不正をネタに脅されているパチンコ屋オーナーからその始末を依頼されたことから物語は始まります。20兆円産業の裏では店ぐるみの不正は当たり前で我欲剥き出しの権力争いが繰り広げられ、利権を貪るべく暴力団、そして警察との深い癒着があり、二人は関係者を攫い脅しして得た情報・証拠品をどんどんと金に換えていくのですが、出てくる奴がどいつもこいつも狸だわ悪党だわなんだけど、誰よりも一番悪党なのは主人公コンビなんですよね。二言目には「攫おか」「どこで攫う?」ってなもんですからね(笑)。疫病神シリーズの桑原ですら1作の中で二度その筋の人御用達の病院に運び込まれたことってないと思うんだけど、今作では堀内と伊達それぞれ病院のお世話になりますからね(笑)。
でもこれが「マル暴のデカ」でなくなったということなんだよね。これまではなんだかんだで金バッジが二人を守ってくれていたけど、今はひとつしくじれば命の保証はない。二人にその自覚はあるけれど、それでも二人は守りには入らずひたすら攻める。容赦なく。そこには桑原以上に生き急いでる感を感じずにはいられないのだけど、桑原と二宮とは違い堀内と伊達の間にはお互いの力量・才覚、そして人間性に対する揺るぎなき信頼感があるので、負ける気がしない感はこちらのコンビのほうが断然上だなー。
タイトルの「果鋭」とは「決断力に富み、思いきりのよいこと」という意味だそうで、まさに今作の二人にピッタリ。