『100万円の女たち』第11話

小林佑希が招待状の送り主であり開菜々果と白川美波の命を奪った“犯人”であること。
花木ゆずとの対談のなかでそれに気付くキッカケ、あの会話になんてなってない花木ゆづの一方的な垂れ流し発言のなにに主人公は反応したのか見てるときはわからなかったけど、そうかそれは「嘘をついている」だったのか。
小林佑希と名乗っていた女の動機はやっぱり快楽だったけど、たまたま手にした小説の作者が人を殺すことを恐れていることを見抜き調べてみたら父親が死刑囚だったってんで「殺意のない売れない小説家」を「殺意を抱く売れっ子小説家」に変えるというゲームをしてたってのはなんていうか、単純すぎて、単純すぎるだけに虚ろな気持ちになった。
開菜々果は1億円で白川美波は1千万と聞いた瞬間、女たちは全員誰かに死ぬことを望まれていて、それぞれ1億と1千万で小林佑希と名乗っていた女が命を奪うことを請け負ったのかと思ったんだけど(殺しの仕事と道間慎を使ったゲームを一緒にしたら面白いんじゃないかと考えたのかと)、白川美波は1千万と「安く済んだ」と言うからにはそれは小林佑希と名乗っていた女が殺すために支払った代金ということか。
開菜々果の金額が高いのは「熱狂的なファン」として逮捕されることも含めた金額だからだろう。
小林佑希と名乗っていた女は道間慎に殺されることを望んでいるのではないかと、それが最終目的、ほんとうの目的なのではないか?とも思いかけたけど、父親が人を殺した男に「殺意を抱かせる」だけでいいと、殺意を抱いた(ことがある)売れっ子小説家・道間慎の次回作が楽しみだと、そういうことなんだよね?。だって道間さんが私を「殺さない」ではなく「殺せない」ことはわかってるんだもん。
ほんとうにこの女がしてるのは自分が愉しむためのゲームでしかないんだろうなぁ。
それはそうと、花木ゆづはなんなんだろ?。花木ゆづ(とイケテツ)が小林佑希と名乗っていた女の仕込みではないことは確かなんだろうけど、であればこいつらなんのために存在してんだ?(ていうかイケテツは立場としては単なる書評家だろうになんで花木ゆづの関係者ヅラしてドラマ化祝いの会にまで参加してんだ?)。
小説家・道間慎を描くために必要だったのだろうとは思うし、開菜々果殺害時では犯人候補として必要だったとも思うし、なにより主人公が佑希ちゃんの正体に気くキッカケを与えるという役割があったわけだけど、この最終局面の最中に主人公と小林佑希との対決と並行して花木ゆづが自作のドラマ化のキャスティングについて何か企んでるってな話を進める理由がわからん。
「理屈に」なんつって乾杯するとか心底胸糞悪いこの男(倫也くんさすがの仕事っぷり!!)に何らかのしっぺ返しがあってほしいとは思うわけで、ドラマ化云々はそのネタなのかなとは思うんだけど、でも花木ゆづとイケテツって主人公(と開菜々果)に一方的に絡んでるだけで、悪口言いまくってるだけで、それこそ小林佑希と名乗っていた女に比べたら雑魚どころかミジンコのようなものじゃん。そのミジンコをここまで引っ張る理由がさっぱりわからんわー。


招待状の送り主から真相を聞かされ、殺意を抱かされた主人公はおそらくその殺意を抱えたまま六畳一間の部屋で独り暮らしを始めた。
そこへ訪ねてきた担当編集の桜井は、またなにも書けないという主人公に全ての過去作の増刷が決まったことを報告する。
「話題性だけで読んだ人が過去作読みますか!?やっと、やっと証明されたんです!」
叫ぶようにそう訴える桜井に、主人公は「桜井さんが根気強く信じて付き合ってくれたおかげです」と言いそして「・・・今後ともよろしくお願いします」と頭を下げた。
「泣いていいですか?」
「いやそれは勘弁してください」
冗談かと思ったらみるみるうちに顔がクシャクシャっとなって堪えきれずに泣きだしちゃう桜井に
「・・・・・・・・・ありがとうございます」
小さな声で囁くように言う主人公
「これからも、一生道間慎は、小説家です」
そう言って本格的に泣きじゃくる桜井に
「ありがとうございます」
もう一度、今度はさっきよりもほんのすこし大きな声で言う主人公


って、ここでわたし泣いた。まさかこのドラマで泣くことになるとは。
一度は犯人だと思いこんだ桜井だけど、このひとはほんとうにほんとうに道間慎の才能を信じてきたし、だからこそ道間慎の小説が売れてほしいと思い続けてきたんだろうね。だから多少汚い手も使ったし、父親のことも、関菜々果と白川美波のことも、主人公の気持ちを気遣い悼む気持ちはある反面道間慎の小説が話題となりどんどんと売れることを喜ぶ気持ちもあったのだろう。
キッカケはどうあれ道間慎の小説を手にすればそれを面白いと感じる人はたくさんいるはずだと信じてるし、過去作の増刷が掛かったことで自分が信じる道間慎の才能が本物であることが証明されたわけだけど、でも肝心の道間慎がこの先どうするのか、もしかしたら道間慎は小説を書くことをやめてしまうのではないかと不安だったんじゃないかなぁ?。
だから「今後ともよろしく」と言われ、それはつまり作家・道間慎の「これから」があるということなわけで、だから嬉しくて泣いちゃったんだよね。
いい人だな。いい人だね。桜井さん疑ってごめんなさい。って思いながらじくじく泣いたわ。
でも道間慎に才能がなかったならば小林佑希と名乗っていた女は道間慎を「玩具」として認めなかっただろうわけで、道間慎に才能があったがゆえに二人の人間が死んでしまったわけで。
親父が死んで、菜々果ちゃんが死んで、美波ちゃんが死んで、ひとみちゃんとみどりちゃんと別れて一人になって、そして佑希ちゃんへの殺意を抱えた主人公はこの先どうやって生きていくのだろうかと、生きていけるのだろうかと思っていたけど、小説を書くことで主人公は生きていくのだろうし、作家・道間慎を支えてくれる桜井という編集者、いや理解者が側にいる。それがほんとうに救い。