夜の部は
「三代猿之助四十八撰の内
通し狂言 獨道中五十三驛(ひとりたびごじゅうさんつぎ)
京三條大橋より江戸日本橋まで
浄瑠璃お半長吉「写書東驛路」(うつしがきあずまのうまやじ)
市川猿之助十八役早替りならびに宙乗り相勤め申し候」
ってなわけで、由留木家の家宝を巡り、善玉と悪玉が入り乱れつつ、ついでに弥次喜多コンビも加わりつつ、京都三条大橋から江戸日本橋までの東海道五十三次を駆け抜ける全四幕五十三場からなる休憩含め5時間弱という作品です。なんの知識もなく拝見しましたが、改めて思う。澤瀉屋あたまおかしいって(笑)。この作品を思い付いた先代猿之助さんの発想力は言わずもがなですが、その奇天烈な発想を形にする澤瀉の技術力とチームワークがすごすぎる。ほんとあたまおかしいよ(笑)。
だって赤ふん姿の半裸のおっさん(オメッティ)が巨大海老と巨大ヒトデと巨大タコとバトルしたり猿之助さんがクレーン使って客席頭上で空中遊泳したかと思ったらステージいっぱいのクジラが出てきて脳天ぶっさしてブシューってなったり十二単に緋袴の化け猫が宙乗りしたり本水(滝)使ってばっしゃんばっしゃん水遊びして口に含んだ水客席に吹いてキャーキャー言わせたり、挙句ほんの1時間足らずの間に弁天小僧菊之助や雷様を含む12役を全部猿之助さんが演じるとかカオスすぎだろw。12役とかやる必要ないですからねw。だって雷様とか出てくる意味わかんないもんw。
でもやる。口上で「長い、クドイ、しつこい・・・というお声もあるかもしれませんが」といいつつそれをやるのが猿之助だし、やってこそ猿之助だし、猿之助ショーを成立させることができるからこそ澤瀉屋は澤瀉屋なのである。その確固たる技術に裏打ちされるスピリッツには毎度毎度頭が下がるんだけど、今回はあまりにもトンチキすぎて感嘆通り越してあきれました(笑)。毎日これをやってるって時点でどうかしてんのに昼もやって来月もやっちゃうっていうんだぜ!?ほんと馬鹿だろ(笑)。亀オタのママンですら「ちょっと亀ちゃんお腹いっぱい・・・(ウプッ)」ってなってましたからねw。
でもわたしのお目当ては亀ちゃんではないのですっ!(いや亀ちゃんもだけど)。
えーっと、唐突に始まったんで脈略がさっぱりわかんないんだけどw、まず米吉くん演じるお袖ちゃんという可愛い娘がいるわけですよ。お袖はどうやら呪いたい相手がいるらしく丑の刻参りをしてて、その日がついに満願ってなことらしいのね。で、なぜそんなことをしているのかを血の繋がらない姉である亀ちゃんが聞きだすんだけど、お袖には京で知り合った想い人がいて子まで生したんだけど、想い人はお勤めで江戸に行ってしまったと(だから子供は養子に出すしかなかった)。でも風の便りでその人は江戸で遊女と懇ろになったこと聞いて、その遊女に復讐すべく丑の刻参りをしているのだと。そんな妹に同情しつつもそんなことをしてもむなしいだけだと言い聞かせる姉でしたが、そこへ旅するイケメンが一晩泊めてくれませんかとやってくるのです。うちは宿屋じゃないですよと言いつつも玄関を開けるお袖ちゃんですが、なんとそこにいたのは想い人!。今まで何してたの逢いたかったと想い人である由井民部之助を嬉々として招き入れるお袖ちゃん。いま貴方の話をしていたところなのよと愛する男を紹介するべく姉を呼ぶお袖ちゃん。妹の男と顔を合わせた姉は言いました「あ、貴方は・・・っ!」。なんとなんと、民部之助が江戸で馴染んだ太夫は姉・お松だったのです!!!(江戸では偽名使ってました)。しかもお松もお松で民部之助の子を生していたそうで、つまり民部之助は姉と妹両方を孕ませていたのですっ!!。ギャーなんというクズ男っ!!。
このイケメン屑こそがわたしのお目当てでしてw、米吉くんと亀ちゃんが隼人を取り合う図だなんて知らなかったので卒倒するかと思いましたよ!。そんな心の準備してきてねーっつの!!。
つーか姉ちゃんひでえのw。妹の話聞いたくせにイケメンが遊女時代の男だとわかるやいなやその手を取って自室に連れ込みましたからねw。妹ガン無視でw。身体弱くて猫だけが癒しとかなんとか言ってたはずなのに超肉食じゃねーかよw。
つーかイケメンもイケメンで手引かれるまんまついていくんじゃねーよと!!w。
目の前で姉妹が自分を取り合ってるってのにぼーーーーーーーーーーっと突っ立ってるだけなのこの男!!。
で、妹は泣きながら部屋を飛び出し無人となったところへやってきた姉妹の父親(こいつも悪人)が落ちてた画(妹が丑の刻参りに使ってたにっくき遊女=姉ちゃんの絵)を拾い、ちょうとその横に落ちてた釘(これもまた丑の刻参りで使ってた代物)で壁に打ち付けると姉ちゃんの部屋から叫び声が。この日は妹による丑の刻参りが満願を迎える日。つまり姉とは知らず妹がかけた呪いが成就する日なのです。釘を打たれたような痛みという姉の顔からイケメンが手を離すと左目の周囲が爛れ酷い顔に・・・ってなにこの超展開w。
ところでこの日、いろいろあってお松は身売りすることになってました。でもこんなにひどい顔になってしまっては売り物にならないと思いきや、そこへやってきた娼館の女将は契約は契約だからと代金を払い、さらに治療も受けさせてやると言ってくれるのです。ここにも裏があるんですが、とにかく姉は売られてしまうのね。それをぼーーーーーーーーーーーーっと見送る民部之助。顔が爛れた女に用はないのか我関せず感バリバリの民部之助。クズです!この男マジクズです!!。
そんでまぁいろいろあって民部之助は妹と、それから養子に出した子供を引き取り三人で江戸を目指すことになるんだけど、結局子供も妹も死んでしまい一人になった民部之助は「お家騒動なんざ話がちっちぇ。俺、橘流を極めるぜ!橘流で天下取るぜ!」って、何言ってんのこの男・・・?ですよw。つーかこのあと由比正雪になりますってマジかw。
歌舞伎の世界じゃこの程度のクズ男ザラなんだけど、何からなにまで猿之助が演じることもあってもう誰が主役なのかもわからない、考えるだけ無駄な作品の中でこの米吉くんと猿之助に取り合いされる隼人ってのは比較的わかりやすい・・・というか、ストーリー的にはもうここしかマトモな場面がないんですよね。いやまぁここも最終的には姉が可愛がっていた猫が実は化け猫で、民部之助とお袖と子供が立ち寄ったボロ寺で実は生きていたという設定で姉妹の母親に化けてまずは赤子を喰らい続いて妹も喰らい、民部之助が持っていた雷丸で斬られそうになるも逃げました(ここで宙乗り)ってなトンデモ展開なんですが、理解は及ぶの。それだけに、見終わった感想として残るのは「隼人クズ」しかないんですよねw。「猿之助さんすごかったねー。滝すごかったねー。ていうか隼人クズ」ってこれしかないのw。どんだけ感想言っても最終的には「隼人クズ」になっちゃうw。そんなわけでわたし的には大満足でございましたw。
2列花横だったんで家を捨てるお袖ちゃんと民部之助がボロ茣蓙にくるまる(今でいうと1本のマフラーを二人で巻く感じ)のも花道でのソロ長台詞からの見得も真横で見られて血管切れるかと思いました。気持ち的にも身体的にもw。二人ともキラッキラのぴっかぴか!!。若いってそれだけで価値があるわよね。