『八月納涼歌舞伎 第一部 第二部』@歌舞伎座

演目と役名を確認するや否や、光速で一部のチケットを取りました。
なぜならば一部は坂東巳之助祭りになるであろうと確信したからです!!!。
巳之助さんが演じられるのは「嫗山姥」(ちかえもん作)の太田太郎と「権三と助十」の助八でございます。
前者は源頼光の許嫁である沢瀉姫を上司の命で奪いにくる立場的には“悪役”で、後者は染五郎さんの弟役なのですが、役者目当てとしてはどちらもなかなかに美味しい役でして、期待通りの『みっさま祭り』でわたしウッハウハでした。


『嫗山姥』
扇雀さん演じる八重桐と橋之助さん演じる煙草屋源七(実は坂田蔵人時行)は元夫婦なんだけど、夫が父親の敵討ちするために離縁したのね。そんで沢瀉姫の屋敷で偶然再会し喧嘩になるんだけど、未だ父の敵討ちがどーのこーのと言ってる元夫に「ハァ?あんたなに言ってんの?あんたの妹がとっくに敵討ちキメてみせたけど、あんた知らなかったの?世間でも大騒ぎなのに知らないとか情弱すぎね?」と冷たく言い放つわけです。でショックを受けた時行はその場で切腹するんだけど(他人の家で超迷惑・・・・・・w)、そのとき「俺の魂は元嫁の体内に宿り強い男児となって再び産み落とされるのだ」と言い残します。そしたらほんとに時行の魂が八重桐の体内に入り、そこへ沢瀉姫に横恋慕し許嫁の頼光にいやがらせしてる悪い奴(清原右大将高藤)の部下である巳之助さんが沢瀉姫を奪いにやってくると、八重桐は女とも男ともつかない見た目となり(いわゆる「合体」ですよねw)、パワーアップし巳之助さん率いる雑魚兵たちを追い払う・・・って「嫗山姥」ってこんなに・・・こういっちゃなんだけど雑な話だっけ・・・?と思ったりしたんだけど(以前わたしが見たものとはちょっと違う気がしたのは型が違うからかなぁ?)、そんな感じでみっさまの押戻が拝めます。

みっさまの荒事はポーズが美しいんですよね。強さ、太さといった面ではまだまだなところは否めませんが、ポーズはほんと美しい。スッ!ビシッと伸ばされた手足のしなやかなこと!。あと手下が戦ってるとき客席に背を向けて立ってるんだけど、このとき左手がグーになってるのがすこぶる好き(笑)。
可憐だけど結構肉食だよね?感があるw新悟ちゃんの沢瀉姫もよかったし、目が満足!!。


『権三と助十』
うん、間違いないよね!!このみっさまは鉄板で可愛いと思ってました!!。
神田の裏長屋を舞台とする駕籠かきの獅童さん演じる権三と染五郎さん演じる助十を中心とする群像劇でして、巳之助さんは染五郎さんと一緒に住んでる弟の助八役です。


この日は年に一度の井戸替えの日で、長屋一同総出で作業にあたってるところへ長年この長屋に住んでいた小間物屋彦兵衛の息子・壱太郎さん演じる彦三郎が家主である彌十郎さん演じる六郎兵衛を訪ねてやってくる。彦兵衛は強盗殺人の罪で入牢中に病死したのだが、彦三郎は父がそんなことをするはずがないと、父の汚名を晴らすべくはるばる大坂からやってきたと言う。それを立ち聞きしていた権三と助十の様子がおかしい。実はこのふたり、事件の夜に真犯人と思しき男が怪しい行動をとってるのを目撃していたものの、関わってとばっちりを受けたくないからとこれまで黙っていたのだ。長年ご近所づきあいをしていた“いい人”が殺人の罪を着せられ逮捕されたというのに!。

事情を吐いた二人は彦三郎のためにもなんとかしてやりたいという気にはなるが、だがしかし裁きを行ったのは名奉行・大岡越前守。大岡様のお裁きによって落着した事件を再審議してもらうのはかなりの難儀。そこで六郎兵衛が知恵を働かせ“彦兵衛は無実なのに家主が十分な対応を取らなかったと暴れたので引き立ててきた”という名目で権三と助十と彦三郎に縄をかけ奉行所へ突きだすという作戦を思いつく。作戦通り再審議とはなったが、権三と助十は長屋預かり(長屋で謹慎)となり、おまけに真犯人と目される亀蔵さん演じる左官勘太郎は証拠不十分で釈放されてしまう。その処分について権三たちが憤ってるところへ当の勘太郎が「身ぎれいになった御礼に」と酒を持ってやってくる。釈放されたということは自分達は偽りを申したということになるので平身低頭の権三たちだが、同じく長屋の住人である宗之助さん演じる猿廻し与助の飼い猿を躊躇いなく絞め殺すのを見て怯えながらも(こっ、こいつぜったい殺ってる・・・!)と思わずにはいられない。あまりにも上目線な勘太郎の言いぐさについに助八がキレて凄むと権三と助十も勢いづいて寄ってたかって勘太郎を縄で縛り猿轡を噛ませる。

そこへ奉行所から役人がやってきたもんだから長屋一同は慌てて勘太郎を商売道具の駕籠へ隠す。ここに勘太郎がいるはずだがどこだ?と尋ねる役人にしらばっくれる長屋一同。猿轡が外れ「自分はここにいる。助けてくれ」と訴える勘太郎を役人がひっ捕らえる。実は大岡越前守は最初から勘太郎が犯人だとわかったうえで証拠を押さえるべく泳がせていたのだという。そうとも知らぬ勘太郎は釈放されたのち天井裏に隠してあった血のついた証拠品を燃やすところを隠し目付に一部始終見られていたのだった。

にっくき勘太郎は捕えられ父の冤罪を晴らしたいという彦三郎の願いはかなったが、でも死んでしまった彦兵衛は戻ってこない・・・と消沈する一同に、衝撃の事実が告げられる。実は彦兵衛は死んでなかったのだ!。これもまた大岡様の計らいで、真犯人を油断させるため死んだことにしたのだった。


ってなあらすじで、「井戸替え」という風物が織り込まれた夏にぴったりのとにかく楽しい世話物なんだけど、弟みっさま最高な!!!!!!!!!!!!。
基本兄貴と喧嘩ばっかりしてるんだけど、「兄貴大好き!!」感ダダ漏れのやんちゃな弟でクッソ可愛い!!!!!!!!!!!!!!!。
でさ、なにが最高かって七之助さんと完全にシンメなところ。

七之助さんは権三の女房おかん役なんだけど、おかんと助八行動も言動も完全にシンクロしちゃってんですよ。
普段は口汚く喧嘩してる旦那であり兄貴が他人から悪く言われるのは許さないし、二人が奉行所に引っ立てられるとなると愁嘆場になるのも一緒。おかんは権三に泣いてすがって「もし戻ってこれなかったら一生恨むから・・・」と発案者の六郎兵衛に恨みをぶつけ、助八は「いざってときに使え」となけなしの金を兄貴の懐に押し込み、それじゃあお前が食べる金がなくなるじゃないかと兄貴に言われると「俺は一日二日食わなくても大丈夫」と強がるとか可愛いすぎる!!。

つーかもう「あにきぃ〜・・・」って半べそ状態で心細そうに言うみっさまが可愛すぎてわたし泣きました(笑)。昨年の納涼はいろんなものを背負って抱えて勘九郎さんと踊るみっさまに泣かされたけど、今年はみっさまの可愛さに泣いた(笑)。

そしてもっとも可愛かったのはみっさまVS猿ですよ!!。与助の飼い猿に完敗するみっさまくっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっそ可愛いのなんのって。

きっと日頃からこうやって猿にちょっかい出して出されていつも負けてる助八なんだと思うのよ(想像だけで可愛すぎてジタバタw)。そんな猿が勘太郎にアッサリ絞殺された瞬間の呆然とした顔にギュンッってなるー!(ていうか、この瞬間客席が「・・・ころした・・・!」ってザワっとなったよね)。
勘太郎に「これ以上は聞き捨てならねえ!黙って聞いてりゃいい気になりやがって!!」とキレた助八は、きっと猿を殺された怒りもあったよね。結構あったよね。それまでは弟感バリバリだったのに、もう我慢ならねえって本性(三人が奉行所に行くってときに「兄貴の代わりに俺を捕まえてくれ。俺ならみんな当たり前だと思うだろうから」ってなことを言うぐらいだから、兄よりも弟のほうが暴れん坊さんなのだろう)見せた瞬間目がギラリン!殺気メラメラっ!ってなるんだよね。それはきっと猿のためでもあるんだよ。猿×助八たまらんだろう!!。

あ、書き遅れましたがみっさま褌です。染様も獅童も上半身と太ももに入れ墨はいってるお褌スタイルです。それで脚を開いて座ったりしゃがんだりするよ!!どうよ?どうよ???(ドヤ顔で)(だからわたしはとちり席をとりました。最前列で双眼鏡構える勇気はさすがにないんで)。
上半身はとうてい駕籠かきやってるとは思えない身体だけど(あんまり真面目に仕事やってないからだろうなと脳内補完)、下半身、とくに太ももはムッキムキで、しゃがむともりっとなった筋肉が褌へと続くさまはまさにヘブンズロード。

褌姿でいることが多い助八だけど、勘太郎が訪ねてくる場面では着物を着てるのね。で、勘太郎をボコったるぜー!ってなると着物の裾をたくし上げて帯に挟むんだけど、その動きマジマジ最高です。

あとあと勘太郎が訪ねてきたってんでアワアワした挙句部屋のすみで丸くなって寝たふりしてる後ろ姿!!!。あれ?わたしみっさまの後ろ姿が好きなのか・・・?(笑)。

それからわたしはとにかく「みのかず派」でして、壱太郎さんとの共演を久々に拝めて幸せの極み。同じ場所にこそいるものの直接の絡みはなくてですね、それでもみっくんとかずが同じ舞台に立ってるというだけで胸いっぱいだったんだけど、彦兵衛さんが生きてた!ってなってみんながワイワイするラストシーンでみっさま助八がかず彦三郎の背中に触れて「よかったな!」ってな感じで言葉を交わした(台詞じゃないからニュアンスで)瞬間昇天しました。みのかずはやはり至高ですっ!!!。


二部は例によってママンの希望です。我が母親に亀ちゃんが出るなら見ないという選択肢はありません。


というわけで東海道中膝栗毛
副題に「奇想天外!お伊勢参りなのにラスベガス?!」とあるように、弥次喜多が伊勢に向かってる途中海に落ちて鯨にぶしゅーって吹き上げられた勢いでラスベガスまで飛んでって顔が似てるからって染五郎猿之助の代わりに獅子王を勤めたらアラブの石油王に気に入られてカジノに連れて行かれるもイカサマがバレてベラージオホテルの噴水(染様が鯉つかみやった会場)で警備員と立ち回りしたあとそのまんま(噴水経由で)日本まで流されて戻ってきてそんで伊勢の花火大会で打ち上げられました、というお話でした。

いやあ・・・・・・どうなのコレ?(笑)。完全にワンピース流れというか、ワンピースの経験を活かした作りでありノリなのはまぁいいとして、まさか歌舞伎座で「志村ー!後ろ後ろー!」なんてものを見る日がくるとは思いませんでした(笑)。ほんとに「しむら」っつってたからね?(笑)。もう完全にドリフ。ていうかドリフが歌舞伎からいろいろとヒントを得てたってことなんだろうけど、どっちが先かとかそういう話じゃなくってね、最初は笑ってたけどだんだん、いやどんどん引いていく客席の空気感はちょっと体験したことがないものだったよね。

古今東西いろんなネタから面白い要素をパクって(あえてパクってと書きます)弥次喜多にぶっこんだってな感じの作品ですが、それぞれの元ネタは面白いのに乾いた笑いしか出なくなっちゃうのはただ面白いネタを話の流れに押し込んだだけで“この作品なりの”ネタにしきれてないから・・・・・・かなぁ。例えば一番はじめに劇中劇として「吉野山」をやるんだけど(演じるのは春猿さんと猿弥さん)、後見(黒子)の手際が悪すぎてひっちゃかめっちゃかになっちゃう、というものなのね。で、実はその後見はバイトでやってた弥次喜多でしたー!ってのがオチになるわけなんだけど、客が実は猿之助染五郎だったと『わかる』のは最後の最後なんですよね。もちろん元ネタがわかってれば後見の中の人が二人であることはすぐわかるんだけど、みんながみんな元ネタを知ってるわけじゃないわけで、それをわからせるための工夫が足りなかったとわたしは思う。二人がやってるんだとわかればベタなドタバタも「面白い」けどわからないと「クドイ」と感じてしまう。それが(そういう感じの笑いが)手を変え品を変え延々と続くわけだから、そら客席もだんだん「・・・・・・」←こんな感じになるわな。

でも最終的に宙乗り見ちゃうと「楽しかったねー!」って気持ちになっちゃうんですよ。だって『三か月の飛び納め』ですもん。猿之助マジックなのか(わたしたちが)猿之助馬鹿だからなのかわかりませんが、傘を片手にゴキゲンに宙を舞う猿之助さんに対しおずおずと、でもぐるぐる前転する(4.5回まわってた)染五郎さんを見たら満足しちゃうのです。猿之助さんの宙乗りは全てを超越し帳消しにするのです。こればっかりは実際に観てと言うほかない。
正直言うとですね、せっかく猿之助さんが染五郎さんと組むわけですから(滅多にないんだよ!)、もっとガッツリ芸と芸をぶつけ合うような作品を拝見したかったってのはあります。でも舞台上の猿之助さんがずーーーーーーーっと楽しそうで、とにかく楽しそうで、『染様と歌舞伎座で馬鹿』をやりたかったんだろうな・・・とか思ったら「よかったね亀ちゃん」って言いたくなっちゃうよね、とはわたしの母親談。

そしてこの作品、弥次喜多が立ち寄った茶屋(茶屋の娘は新悟ちゃんで、実は新悟ちゃんは元海賊で現盗賊の白井髭左衛門の手の者なのです。ときめき設定!!)(しろいひげざえもんさんは完全にワンピ歌舞伎の白ひげですw)で出会った若殿とその家来と伊勢への道中を共にするのですが、その若殿を演じるのが染五郎さんのご子息である金太郎さんで、家来が中車さんのご子息である團子さんなんですよね。十数年後、浅草歌舞伎でわたしを夢中にさせてくれるかもしれない若き高麗屋の坊ちゃんと澤瀉屋のプリンス様がガッツリ共演なさってるわけですよ。出番も台詞量も思いのほかいっぱいあって、途中から完全に金太郎さんと團子さんを見守り愛でるババアになってましたわたし。

金太郎さんは声変わりしつつあるのかなぁ?声量があまりなかったものの細面でシュッとした立ち姿はまさに美しく凛々しい若殿様で、團子さんはまだ子供っぽい身体付きだけど声量たっぷりで台詞聞こえもすばらしく、この二人が掛け合いで「ラマンチャ」を謳いあげるのには興奮したわー。

あとそこまで本気のやつじゃなかったけど、獅子王の場面で猿之助染五郎の毛振りを見られたのも嬉しかった。これもう二度と拝めないのではなかろうかと思うとやっぱり本気のやつでやってほしかったと思わずにはいられませんが・・・。

そして特筆しておくべきこととして、獅童さん超美味しい役でした。弥次喜多はこれ以上進化しなくていいってかすんな!ここで留まって!!ってな感じだけどw、獅童さんの支配人は最終的にどうなるか楽しみであるw。


『艶紅曙接拙 紅翫』
わたし歌舞伎座に歌舞伎を見に来てる
そう思えてホッとしました(笑)。
ホッとしすぎてぼんやりしてたのかあんまり記憶がないんだけど・・・紅かんを踊る橋之助さんを背後に控えながら(座りながら)横目でじっと、まさにガン見の勢いで見てる蝶々売の巳之助さんだけはしっかり覚えてる。

これって紅かんさんをみんなが「見てる」というものなので横目などではなく顔を向けて見てもいいんじゃないかと思うんだけどダメなのかなぁ?。
ダメなのだとしたらそれでも横目で見てるみっさまにグッときちゃうし、見てもいいのに(見ればいいのに)あえて横目を貫いてるんだとしたらみっくんモエる(笑)。

最後は二人ずつでポーズを決めるんだけど、ここ七之助さんと巳之助さんがセットでくっそ麗しかった。このおしゃしんほしいよー!褌も!!!!!!(15日時点ではまだ舞台写真売ってませんでした)。