澤瀉屋の巡業初日を拝見しました。
演目は『獨道中五十三驛 京三條大橋より江戸日本橋まで 浄瑠璃お半長吉「写書東驛路」』で、猿之助さんと坂東巳之助さんのWキャストとなります。
この演目、以前新橋演舞場で猿之助さんが勤められたものを観たんですが、一言でいうと「お腹いっぱい」という感想だったんですよね。あと「澤瀉屋あたまおかしい」(笑)。
猿之助からの猿之助からの猿之助で猿之助。またもや猿之助。さらに猿之助。そしてトドメの猿之助。
って感じで猿之助さんが次から次へと早変わりで登場し、つーか雷様とか意味わかんねーし!ってな感じで「もう亀ちゃんお腹いっぱいだよう・・・」と母親と言いあった思い出がある演目でして、それをWキャストで巳之助さんが勤められるとか大丈夫か!?と、自分の感想を読みかえしてみたら『口上で「長い、クドイ、しつこい・・・というお声もあるかもしれませんが」といいつつそれをやるのが猿之助だし、やってこそ猿之助だし、猿之助ショーを成立させることができるからこそ澤瀉屋は澤瀉屋なのである』と書いてあって、わたしいい感想書いてんなーとか思ったんだけど(笑)、とにかくそういう特別というよりも特殊な演目なので、それをやるとかみっさまマジで大丈夫なの!??と、期待2%心配98%で入間までの小旅行と相成りました。
演舞場では化け猫も含めすべてを猿之助さんが演じていたものを、Wキャストということで化け猫と13役早変わりの役割を変えての上演となります(猿之助さんが化け猫をやる回は巳之助さんが早変わり)。なのでそこまでお腹いっぱいにはならず、むしろもっと食べたいよーってな感じで、腹・・・六分目ぐらいかなぁ?。
もちろんそれは猿之助さんに対しての感想で(普通なら充分まんぷくまんぞく!になれそうなものなんだけど、でも亀ちゃん比としてはいつももっともっともーーーーーーーっと濃いものを見せて魅せていただいているので)、巳之助さんは・・・・・・・・・・・・・・もう吐き寸でした・・・。
昼回は巳之助さんが化け猫(宙乗り)で、こっちはまぁなんとか出来るかなと思ってたんですよね。そこまで心配してなかったんです。でも実際観たらみっさまの一挙手一投足にハラハラするやらドキドキするやらでもう祈りっぱなし。欄間をぶち破るところで上手く破れなくてモタつき(一回で打ち破れなくって手でペキペキ折っててダメなんだけどくそ可愛いw)、その下にある手すりを裏手で握ってくるっと回って一回転する瞬間はもうマジ祈り。
緊張もあっただろうし、初日(初回)だから段取りを頭の中で再確認してたのかなーと思うのだけど、手すりを握るまえに明らかな「間」があって、そこ今年一番緊張したわ。別にわたしがやるわけじゃないのに、我が事のように緊張したし本気で祈らずにはいられなかった。
・・・あ、うそ。今年一番ってか、今年初めの浅草歌舞伎で松也が源九郎狐やったときも毎回これぐらい緊張してた・・・・・・w。
つーかババアが本性表して化け猫化すると真っ赤な舌を出すんだけど、それ完全にヘビメタ状態でアチャー(笑)。どう見てもKISS(笑)。ここはしゃーない。みっさまにとっての舌だしはこれなんですよ!!(笑)。
とまぁ細かい失敗とかテンポの悪さはあれど、宙乗り含め初役の初日にしてはまずまずの出来だった昼回に対し、夜回が・・・・・・かなりボロボロでした。
早変わりをこなすことに精一杯でひとつひとつの役がまだ演じるところまでいってないのはまだ仕方がないの範疇だとして、早変わりを繰り返すごとにどんどんと拵えが・・・雑になってしまって、お絹とか帯が完全に腰下の位置になっちゃってるもんだから腰骨のあたりにマジックテープらしき痕跡が見えちゃっててちょっとこれはいただけないってな感じだったのよね。
でもこれはこれから。早変わりって技術だからさ、これは公演を重ねれば重ねるだけ身についていくものなんじゃないかと思うんです。なにより自分ひとりが稽古してどうこうなるものではないわけで、変わりの役者や衣装さんなど他人との「呼吸」を合わせることがなにより重要であろうと想像するわけで、それはこれからだと思う。回数をこなすことによってそれが培われていけば余裕が出てきて演技に意識が回るだろうし、わたしはもう今後の巡業を観る機会はないのでそれを自分の目で確認することはできそうにありませんが、ここをスタートとして最終的に巳之助さんの早変わりがどこまで進化できるかと思うと想像だけでもワクワクしかないよ!!。
でもみっさま結構痩せてて、なんかもう“ペラい”ってな感じの身体つきで、納涼で観たときはそこまで細いという印象ではなかったので、それはおそらくこの巡業の稽古のキツさによるものなのではないか推察いたしますが、本番も見た事ないほどの汗ダクで、鼻の下(鼻と唇の間)とかもうぺっかぺか状態だったもんで体力面はちょっと心配だなぁ・・・・・・。
移動もあるから食事のタイミングも不規則になるだろうけど食べられるときには美味しいものいっぱい猿之助兄さんに食べさせてもらって、どうか最後まで元気に勤め上げられますように。頑張れみっくん!!。
猿之助さんは初日からいつも通りというかさすがの安定感でしたが(むしろ初回だけあって(そのあと即新潟への移動もあるし)身体馴らし程度ですらあった)、巳之助さんとWキャストになったことで猿之助さんがいかに凄いことをやっているのか思い知らされました。なんかもう、亀ちゃんはそれが当たり前みたいなところがあるからさ、感覚が麻痺してるところがわたしにもあったんだなーと。
あとやはり「見せ方」がうまい。猿之助になってからはとくに独自路線を突き進む亀ちゃんなんで、ほかの役者さんと比較する材料がなかったりするんだけど、役に対する経験値を取っ払ってもちょっとした身体の使い方、間の取り方、笑いの起こし方、そういうものの巧さを改めて感じました。
・・・ちょっと思ったんだけどさ、次世代に芸を伝える(教える)目的はもちろんあるんだろうけど、今若手で一番勢いのある一人と言っていいであろう巳之助さんですら全く歯が立たないんだってことを見せつけるための公演企画だったりしてね(笑)。亀ちゃんってそういうとこあるやん?(そこが好きwだからすきw)。
ってのはソレとしてw、猿之助さんと同じ舞台で同じ役を演じることなんてそうそうないわけで、みっさまがどれだけのものをどれほどのものを吸収してくれるのか、ほんと楽しみ!!。
あと特筆すべきこととして、今回の巡業で一番オイシイのは寿猿さんです!!。ある意味メインと言っても過言ではないッ!!(笑)。