今月はもう何をおいても金と時間があるならば浅草に行きたい!!!・・・という気持ちではありますが、でも亀ちゃん改め四代目市川猿之助が初めて歌舞伎座に立つ、それも初春から!となればなにがなんでも観なくてはならないのである。義務である。
というわけで、『番町皿屋敷』(男の気持ちを試すために大事なお皿を割った女に対し、皿なんざどうでもいいが俺の気持ちを試したことは許せねえ!と女を殺して井戸に沈める男の話)→『女暫』(超強い主人公が無双する歌舞伎十八番のひとつ「暫」の主人公を女体化するという斬新な芝居)→『黒塚』(人喰い鬼婆をイケメン僧が退治するお話)という玉様の女暫以外の演目おかしいだろ!?正月だぜ正月!???特に一番最後の!!!!!と言うしかない夜の部を拝見しました。
澤瀉屋にとって大事な大事な作品であることは存じてますし、初めて新しい歌舞伎座に立つときは澤瀉屋のお家芸である黒塚でという想いも理解できるとは思います。でも正月から鬼婆のガチ踊りはちょっとキツイよ亀ちゃん・・・と思ったことは否めませんが、それはそうとして黒塚、凄かった。凄まじかった。襲名公演よりもはるかにキレッキレ。まさに鬼気迫るという表現がピッタリの超絶鬼婆でございました。仏倒しの演出は音だけ(暗転)で次の瞬間逆を向いてるという今まで通りのほうが人外らしくて好みだけど、実際見ちゃうと倒れっぷりもすごいけど起き上がる速度がすごすぎて、ちょっと言葉が出ないわこれ。これはこれでマジ超人。
亀ちゃんに対しては基本採点甘目である自覚があるのですが(わたしよりも更に亀ちゃんラブな母親と一緒に観たこともあるし)、特に猿之助に思い入れがなかったり、正月から黒塚なんて観たくないわと思っていたであろう客をもその芸で黙らせ納得させる四代目の黒塚でした。玉さんの華やかで楽しい女暫の余韻でふわふわしてた劇場の空気が黒塚が始まって時間が経つにつれどんどんと引き締まっていくのが肌で感じられたもん。客席が集中していくのがはっきりとわかった。正月から気合いバリバリの亀ちゃんを拝めて幸せだと思わざるを得ない。
そしてそんな亀ちゃんに涼しい顔でついていく勘九郎の巧さよ。亀ちゃんって襲名後は特に基本いつも気負ってる感があるように思うのですが、勘九郎相手だとその気負いが中和される気がする。たぶん演ってる亀ちゃん自身に何も変わりはないのでしょうが、観てる側の気持ち的に。
ていうかさ、わたしにとって猿之助さんと、それから阿闍梨を演じた勘九郎さんの「正月」と言えば浅草歌舞伎なんですよね。浅草歌舞伎と言えば亀ちゃんでありカンタなんです。
でもその二人が揃って1月に歌舞伎座の舞台に立っている。猿之助と勘九郎として。それがとても・・・嬉しかった。こうやって世代を交代しながら歌舞伎が続いてきたのだろうし、これからも続いていくんだなーとか思っちゃって、話関係ないところで(だって鬼婆だしw)泣きそうになってしまった。てか女暫で團子さんが茶坊主役で出てたんだけど(なんか物理的に大きくなっててビックリした)、この黒塚を受け継がなくてはならない團子さんも大変だなぁ・・・と。
それから、猿之助襲名公演では阿闍梨を團十郎さんが務めてくださったんですよね。でももう團十郎さんはいない。その事実にも泣きそうになりつつ、今年も(歌舞伎に限らず)ひとつひとつの舞台を大切に拝見しようと誓った次第。
幕外で玉さんと舞台番の吉右衛門さんがキャッキャしてるのはお正月って感じで楽しかった!。気に入らない相手や気に入らない言動があると「ツンッ」って横向いちゃう玉さん可愛すぎるw。
初めてみた吉右衛門さんの青山播磨は思ったよりもちゃんと若くて、染の弁慶デビューにお付き合いしてくれた義経といいこれといい、台詞の聴かせっぷり、声と調子で若さであり気品を表現される様、いやはやお見事です。今回浅草チームの中で特に播磨屋組の成長に驚かされまくりなんですが、この吉右衛門さんに教えてもらってるからだと思うと超納得ですわ。ここいらで松也もキッチリ教えてもらえるといいんだけど・・・。