薬丸 岳『最後の祈り』


以下、おもいっきり内容に触れてます↓↓






刑務所で教誨師をする男が主人公で、16歳で祖母を殺しその後二人の女性を殺して死刑囚となった男と対話をする物語なのですが、主人公には目的があるんですよね。復讐という目的が。
死刑囚の男が殺した女性は戸籍上は他人である主人公の実の娘なんですよ。なので戸籍上の母親の発案で「教誨師として死刑を望む犯人と接触し、生きたいと思わせ執行時にそれを打ち砕く言葉をぶつけて絶望させて死刑にする」ために死刑囚の教誨師という辛く苦しい役目につくことになるのです。
でも復讐相手である犯人や他の死刑囚と対話を重ねることで主人公の心はどんどんと削られていくなかで、主人公自身がすべきことはなんなのかを見つけるわけなんですが、この作品の特徴として主人公もまた「罪」を犯してるんです。

その罪とは元交際相手を自殺させてしまったことで、その経緯というのが主人公が付き合っていた相手の姉を好きになり、姉と付き合うことになったから妹とは別れたが、1年後に妹は自殺して、しかも主人公の子供を産んでいた、というもの。
で、遺された子供の戸籍上の母親は自殺した妹の姉。姉が実の娘として妹が産んだ娘を育ててきたってなものなんだけど、私はこの「姉」の存在に引っかかってしまい本筋に集中できなかった。

付き合ってる女に姉を紹介されたらドストライクだったもんで一目惚れしてしまったってのはどうしようもないと思うのよ。出会ってしまったんだからそれはしゃーない。そこで想いを押さえておくことができず告白(というかキス)してしまったのはクズだけど、でもまあそういうこともあるだろうよ。
で、問題は姉よ。姉が受け入れなければそこで終わる話なのに、受け入れた時点で一番悪いのは姉だよな。友達でもアウトなのに妹の男だぜ。
妹の子供を実子として育て、主人公とも距離を保った関係でい続けることで贖罪してるつもりなのかもしれないけど、自分はなにもできないからと主人公に娘を殺した男と向き合うことを要求し「結果」だけを求めるこの女の心情が一切描かれないこともあってどうにもこうにも気になってですね、繰り返すけど集中できなかった・・・。